
裂果
「クラブRより参りました」
命じられたように言葉を述べて、御堂はホテルのドアをノックした。
都内の一等地に立つ外資系の高級ホテルのエグゼクティブフロア。照明は薄暗く足元を照らす程度で、贅沢に配置された部屋の並びは、客同士が廊下で顔を合わすことも少ないだろう。
クラブRでは奴隷として裸同然の格好をさせられていたが、ここでは御堂も仕立ての良いスーツで身を包んでいた。高級なホテルにふさわしい装いだ。
デリバリーサービスのごとく、今回のように地上に派遣されることも多々あった。
まさしく風俗産業の店と変わらないように思えるが、クラブRは地上の店とは一線を画す。クラブRが抱えるのは本物の奴隷であり、そしてまた、客を選ぶ。
だが、どのような基準で客を選んでいるのか知る由もなかったし、奴隷の立場である御堂にはそれを知る権利さえ与えられなかった。
今夜の客はどんな客だろう。
重厚な装飾をされた扉の向こうから人の気配が近づいてくる。クラブRが選んだ客だ。きっと、嗜虐的な嗜好の持ち主であるに違いない。
御堂は片手に黒いボストンバッグを持っている。中には、拘束具や淫具、鞭も含めた様々な淫猥な道具が入っている。客がそれを御堂に好きに使うのだ。
何をされるのか、それを想像して、おびえると同時に下腹部の奥がジンと疼いた。奴隷たる御堂は、客の相手を命じられれば、客の要望を断ることは出来ない。徹底的に身体を蹂躙されて、鞭で打たれて悲鳴を上げ続けても、ふしだらに躾けられた身体は残酷な仕打ちに反応するのだ。
御堂をそう仕込んだのは佐伯だ。クラブRの支配者であり、王である佐伯。その眼鏡の奥の冷徹な眼差しを思い出して、御堂は熱っぽい息を吐いた。あれ程拒絶していたのに、今や、御堂は支配される悦び、そして奉仕する悦びを知ってしまっている。もう、元には戻れない。
ガチャリ、と金属音が響いてドアがゆっくりと開いた。そして、中から恰幅の良いバスローブ姿の男性が現れる。その顔を目にして、御堂は驚きに息を呑んだ。
「待っていたぞ。入りたまえ、御堂君」
「……大隈、専務」
思考が現実に引き戻され、喉が干上がる。よく見知った顔が目の前にあった。
目の前に立つ男は、御堂が地上で、まだ一人の人間として生きていたころの勤める会社の上司だった大隈だ。
「随分と久しぶりじゃないか」
「ご無沙汰しております……」
シャワーを浴びたのだろう。大隈は上気した頬で好色な目を御堂に向けた。
混乱に陥った意識のまま返答する声が掠れる。大隈は御堂が奴隷に堕ちたことを知っているのだろうか。いや、知っているからこそ、驚きもなく部屋の中に御堂を迎え入れようとしているのだ。そして、御堂をこの場に派遣した佐伯も、相手が大隈であることを分かって、御堂に相手をさせるのだ。御堂の屈辱を深め、客である大隈を悦ばせるために。
促されるまま、ホテルの部屋に入った。大隈は窓際の瀟洒な椅子に腰を掛けた。
言葉が見つからないまま、伏せがちな視線を足元に彷徨わせ、息をひとつ吐いて心を決めると、ベッドにボストンバッグを置いて、大隈の正面に立った。揺れる感情を排して、丁寧で義務的な接待する側の言葉遣いを返す。
「大隈様。お時間は今夜一晩と承っておりますが、よろしかったでしょうか」
「ああ、その通りだ。……私のことは、前みたいに専務と呼んでくれるかね、御堂君」
「かしこまりました、大隈専務」
大隈の言葉に、この男は部下としての自分を抱きたいのだと分かった。もちろん、客のささやかな要求を断ることは出来ない。
いつから大隈は自分を性欲の対象としてみていたのだろう。上司と部下の関係であったときは、大隈から性的な誘いを受けたことはなかったし、そのような視線を感じたこともなかった。しかし、それは、御堂が決して大隈の誘いに乗らないことが分かっていたからこそ、表に出さなかった欲求なのだろう。勝ち目のない勝負はしない。それは勝負に勝ち続ける人間のセオリーだ。
だからこそ、性奴隷に堕ちた御堂を前にして、大隈はひた隠しにしていた淫欲を露わにしようとしている。
そして、クラブRの支配人である佐伯は、御堂を大隈に売った。その事実を突きつけられて打ちのめされるが、腹を据える。
「では……」
「そのままでいい」
スーツを脱ごうとして止められた。
着衣のままのプレイを好む客も多い。今宵、御堂に指示された衣装は、会社勤め時代を彷彿とさせる三つ揃いのスーツだ。大隈は、ねっとりとした視線を御堂のストイックに絞められたネクタイのノットに這わせた。
「まずは、私に奉仕をしてもらおうか」
「承知しました。奉仕させていただきます」
ネクタイを緩めて襟元のボタンを外すと鷹揚に椅子に腰かける大隈の開いた脚の間に跪いた。バスローブの前を寛げると、まだ柔らかい性器が垂れ下がっている。
冷ややかな笑みを浮かべた大隈の見下ろす視線を肌で感じながら、その色味の濃い先端に口づけをして、口腔内に迎え入れた。大隈のものは太さはそれ程ではないものの、長さがある。
口の中で勢いを増していくにつれて舌の付け根を圧迫されて苦しくなってきた。顔の角度を調整して、大隈のものを喉の奥まで迎え入れた。「ん……」と大隈の感じ入る吐息が漏れて、自分の髪の毛に埋まった手に力が入る。
濃厚な雄の匂いと味が口内に溢れる。唇で扱き上げて喉の粘膜で締め付ける。頭に置かれた指に力が入る。限界まで張りつめたペニス。大隈が御堂の頭を押さえつけると、ビクっと大隈のペニスが大きく震えた。びゅくびゅくと先端から濃い白濁が噴き出してくる。それを零さぬように受け止めた。満足したペニスが御堂の舌で粘液を拭って引き抜かれる。
大隈の前に傅いたまま、大きく口を開いて白濁に塗れた舌を出して、大隈の精を受け止めた証を見せた。大隈が感心したように息を吐いた。幼子にする手つきで頭を撫でられる。
「随分としっかりと躾けられているじゃないか。御堂君、零さず飲みなさい」
大隈の指示に従って、喉を鳴らして飲み下した。粘ついた精液が喉に引っかかりながら落ちていく。
その全てを見届けて、大隈は意地悪く笑った。
「まさか、私の腹心の部下に下の世話までしてもらう日がこようとはな。上手じゃないか、御堂君。君は何をやらせてもそつなくこなすな」
「ありがとうございます。お褒めに預かり光栄です」
貶める言葉を受け流し、教え込まれた台詞を口にしたときだった、部屋の扉をノックする音が響いた。
「やっと来たか。ドアを開けてくれ」
「かしこまりました」
立ち上がって再びネクタイを締め直し、着衣の乱れを整えると、ドアに向かった。今夜の相手は大隈だけではなかったのだろうか。
相手は誰で何人なのかという情報は、事前に一切教えられない。相手が誰であれ、何人であろうとも、客の要望に身体を使って尽くすだけのことだ。
他の奴隷は数名で派遣されることもあると聞いたが、御堂は今までひとりでの派遣しか経験したことがなかった。
ショーでは他の奴隷と組まされたことはあったものの、御堂は常に嬲られる側であったし、同じ立場であるはずの奴隷に犯されるのは屈辱であり、倒錯的な快楽に翻弄される舞台だった。だから、御堂はショーを苦手としていて、大勢の前で痴態を晒すよりも客を相手にしていた方がまだ気が楽であった。ただ、それを選択する権利は自分になく、その日、突然、その夜の仕事を告げられることが常であった。
部屋のドアの前に立ち、御堂はドアノブに手をかけると、ゆっくりとドアを押した。
スーツ姿の男性の革靴が見えて、視線を上げていくと、よく見知った顔がそこにあった。思わず、声が漏れた。
「藤田……?」
「御堂さん、お久しぶりです!」
場違いなほど元気な声が返ってくる。
「まさか、君が……」
「御堂さん、いつも通り、俺のことは藤田呼びでいいですよ」
言葉を失する御堂にそう言って藤田は脇を通り抜け、部屋の奥の大隈に声をかけた。
「大隈専務、遅くなり申し訳ございません」
ドアを静かに閉めて、重い足取りで藤田の後をついていく。先ほど大隈に奉仕したばかりだ。御堂の衣服に乱れはないが、緩くはだけたバスローブを羽織った大隈と淫蕩な匂いが漂う室内、何が行われていたか、藤田はすぐに察するだろう。
大隈は藤田が来ることを当然分かっていたようで、顔色を悪くする御堂の姿を愉しみながら、上機嫌に返事をした。
「遅かったじゃないか。御堂君は時間通りに来てくれたというのに」
「タクシーを捕まえたんですが、渋滞に巻き込まれまして。……もう始められていました?」
「軽くな」
大隈の言葉に藤田は好奇の視線を御堂に向けた。藤田も、御堂を嬲るためにこの場に来たのだ。
佐伯は常に御堂に恥辱を与えて、奴隷の立場を刻み付けることを忘れない。
それを改めて思い知らされる。
尊敬していた上司と、可愛がっていた部下に、これから犯されるのだ。自ら身体を捧げることで。
藤田がスーツのジャケットを脱いで御堂に向かい直った。
「御堂さんにお相手してもらえるなんて、夢のようです」
「藤田……」
「君は部下の面倒見はいいんだろう?」
大隈の下卑た笑いが小さく零れる。
かつての同僚であった二人の顔を見返すことが出来なくて立ち尽くしたまま深く俯いた。
そんな御堂の反応を味わいながら、大隈が無情に告げた。
「じゃあ、御堂君、脱いでもらえるかね」
「全部、ですか?」
「当り前じゃないですか、御堂さん」
藤田が笑いながら顔を向ける。二人の視線を痛いほどに感じながら、震える指先に力を込め、スーツのジャケットを脱いで、中のベストの鋲を外していく。
ベストを脱いでネクタイを解いてその場に落とす。シャツとスラックスだけの状態になる。大隈と藤田の息を呑む気配が伝わった。
両胸には太い白金のリングが乳首を貫通している。そのいびつな形はシャツの上からでも分かるだろう。
スラックスを脱いで下はアンダー一枚になり、シャツのボタンを襟元から一つずつ外していった。白い肌が露わになっていく。
シャツの袖から腕を抜いて、上半身を全て曝した。引き締まった身体に滑らかな白い肌。淡い色の乳首にはピアスが貫通し、その刺激で常に尖っている。
二人の視線に射されて、乳首が痛いほど勃ち上がり、ピアスが浮く。
躊躇いのない動作でそのままアンダーを脱いで、二人の前に、どこも隠すことなくまっすぐと立った。
「すごい……」
感嘆の呟きが藤田から聞こえた。その視線は、御堂の胸ではなく御堂の股間に留められている。そこは、無毛に処理されていて、艶めかしい色をした性器がそのままの姿を晒す。そして、性器の先端には、胸と同じピアスが鈴口を貫いて輝いている。
「君はこんないやらしいピアスを三つもつけていたのか」
「御堂さん、本当に性奴隷になったんですね……」
「はい、私の主人(マスター)が私に奴隷であることを忘れぬように授けてくださったものです」
よどむことなく口上を返す。聞かれるたびにこうした台詞をもう何度となく口にさせられていた。淫靡な熱を持った眼差しを注がれて、肌がチリチリと焼ける。
「どうぞ、私のふしだらな身体とピアスを直接触って確かめてください」
こんなことを口にしても、本心はそこにはない。ただ、言うように躾けられているだけだ。それでも、この言葉に煽られて、四つの手が御堂の身体に伸びた。
「ぁ……っ、はあっ、ん……」
無骨な指が肌を這い、ピアスを摘まみ捩じる。陰嚢を包んで中の睾丸を探り、ペニスを戯れに擦る。
それは、愛撫というよりも商品の感触を確かめるだけの無遠慮な触り方であったが、馴らされた身体はすぐに反応しだした。
触るだけ触って、手が離れる。それだけで、「……ぁ」とたまらずに切なげな声が漏れた。
「御堂君、せっかくだからこれを付けてもらおうか。その方が雰囲気が出る」
大隈が御堂が持ってきたボストンバッグの中を検めて、いくつかの拘束具を取り出した。太い革の首輪と太腿を締めるベルト、そして、首から太腿を繋ぐ鎖を渡される。
自分でつけろということなのだろう。
それを素直に受け取って、首輪を締めた。指示されるままにベッドの上で、太腿のベルトを両方に装着し、首輪と鎖でつなぐ。これで脚が伸ばせなくなり、二人の前で開脚して股間をさらけ出した状態になる。
「似合っていますよ、御堂さん」
「ぁ…、ありがとうございます……」
藤田がスマホを取り出して御堂に向けた。シャッター音が続けさまに響く。写真を撮っているのだろう。その写真をどうされようと、たとえ公開されようとも、地下世界の奴隷の身分になった御堂には最早関係ないことではあるが、それでも羞恥に顔を赤らめた。
「では、御堂君、私たちの前でオナニーを見せてもらえるか?」
「かしこまりました」
躊躇う仕草も見せずに承諾して、大隈に手渡されたローションボトルを自分の手にたっぷりと垂らした。それを自分の竿から陰嚢、そして、アヌスの周囲まで塗り付ける。ぬちゃぬちゃと淫猥な音を立てながら、自らのペニスを扱きだした。
「実況も忘れないでくださいね」
可笑しそうに言う藤田の声に頷いて、口を開く。顔を上げれば二人の好奇の視線がまっすぐと向けられていて、視姦で辱められる期待に、身体の芯に淫らな炎が灯った。
「私のオナニーを見てください。お二人に見られて、私は興奮しています……」
ゴクリと藤田が唾をのむ。大隈は椅子に深く腰をかけ、手元にウイスキーのグラスを置きながら御堂の動きをつぶさに見守っている。
左手でペニスを扱きながら、右手を陰嚢の奥の窄まりに伸ばした。腰を浮かせて、ひくつくアヌスを鑑賞しやすくする。
「もう、前を扱くだけでは満足できなくて、こんなところも弄っています……」
そう言いながら、ぬちゅり、とローションをまとった指をアヌスに挿し入れる。自分の指を自ら咥えこみながら、その刺激に「ん……っ」とおとがいを突き出して喉を反らした。
自らのペニスに指を絡めて根元から先端まで扱く。指がピアスに触れるたびに、ピアスが貫く尿道まで淫らな振動が響く。そして、後ろの指を蠢かして、自分の気持ちいいところをゆるゆると撫でながら、快楽を育てていく。
「ぁ、はあ……っ、ん、……ふ」
指の動きに合わせて腰が揺らめく。自分の手指に発情して肌が朱色に染め上げられる。
ペニスの先端から透明な蜜が溢れ出して、亀頭から竿、そして陰嚢までてらてらと光りながら濡らしていく。
「すごいな……」「御堂さん、やらしい……」
大隈と藤田の言葉に顔を赤らめる。上司と部下、二人の前でこんなにはしたない姿を晒しているのに、背徳的な興奮が背筋を駆け上る。
「は、や……っ、んんっ、もう、イきそう……っ、イくっ、あ、ああっ!」
二人の熱っぽい視線に絡み取られながら、恥辱に塗れた絶頂を迎えた。二本の指を咥えこんだヒクつくアヌスは、柘榴のように真っ赤に熟れた粘膜を覗かせている。腰を浮かせて、天井に向かってペニスを突き出すようにして射精する。反り返ったペニス、その頂のリングピアスに指をかけて軽く引っ張ると、広がった尿道から白濁が噴き出して自分の胸や腹をまだらに汚した。
「ハア……っ、ハア……っ、」
激しい絶頂に息を乱した。白んだ視界が徐々に色を取り戻す。
ベッドの端が重みに軋み、そこに黒目を向けると、目を血走らせた藤田がベッドに乗り上がってきていた。
「御堂さん、俺、もう、我慢できません……」
ガチャリと硬質な金属音がして、藤田がベルトを外し、いきり立った自身を下着から取り出した。充血しきったそれは成人男性のサイズを優に超える太さで、赤黒い先端は欲情で濡れそぼっていた。
「あ、や、まだ……っ」
余裕のない仕草で腰を抱え込まれて、両膝を大きな手で掴まれて限界まで広げられた。野獣めいた荒い呼吸とぎらついた眼差しが御堂を見据える。その表情は、獲物を屠る肉食獣めいた無慈悲さを孕んでいたが、それでも藤田は形式的に御堂に確認してきた。
「部長、いいですよね?」
凶悪なまでに張りつめた先端を御堂のアヌスに宛がう。その熱い肉の感触に、慄いた。並々ならぬサイズの藤田のモノを受け入れられるほど、アヌスは十分に解れてはいない。「もう少し待ってくれ」、そう哀願しようとしたところで、大隈が御堂の代わりに返事をした。
「いいぞ、藤田君。好きにし給え」
「御堂さん、挿れますよ……」
「待って、藤田…っ、ん……、ぅああっ」
大隈の言葉に押されて、藤田が伸し掛かってきた。アヌスに灼熱の圧力がかかる。
「くぅっ、あ、ああああっ!!」
「思ったよりも、きついな……」
御堂の腰を藤田ががっしりと掴む。逃げ場を失ったアヌスに藤田の巨大な楔がじわじわと埋まっていく。
凄まじい圧迫感に悲鳴を上げた。苦痛に引き攣れる狭い肉洞を藤田が力任せにこじ拓いて、肉塊を沈めていく。開ききったアヌスがめりめりと裂けそうだ。どうにか亀頭のえらの部分まで呑み込ませ藤田はにこやかに笑いかけた。
「御堂さん、ヤりまくってると聞いたので、もっと緩いのかと思っていたら、いい具合ですね。痛いくらいです」
「藤田……っ、お願いだから抜いて…くれっ、くる、しいっ」
「大丈夫ですよ。ここまでくれば、あと少しですから」
「ひっ、ぅあっ、あああっ!!」
勝手なことを言いながら藤田は御堂にぐっと体重をかけて、一息に腰を進めた。一番太いところを咥えこんだアヌスは、最奥までずくずくとペニスを押し込まれる。
重くなった下腹部は藤田の質量を斟酌なく呑み込まされて、爆ぜそうなくらいの痛みが広がり、それが疼くような電流となって、背筋を這いあがっていく。
「御堂さん、動きますよ」
「やめ……てくれっ、こんなの……うっ、あ、ふぁ、ああぁっ」
藤田が腰を遣い始める。中を探るように細かく動かしていたが、次第に我慢しきれなくなったのか、御堂に勢いに任せて太いペニスを打ち込みだした。
藤田に突かれるごとに、骨格が軋み、内臓を押し上げられる。身体がバラバラになりそうな衝撃に必死に藤田の背にしがみついた。
その仕草が藤田を喜ばせたらしい。
「御堂さん、そんなにイイですか?」
「ち、違っ! いっ、うあ…っ、は、んんっ」
否定する言葉はすぐに喘ぎに取って代わられた。手ひどく扱われれば扱われるほど、身体は淫らに反応する。佐伯に徹底的に仕込まれた身体だ。理性を置き去りに身体はどこまでも発情していく。
「ん……、ふ、やぁっ、あ、ふ…じたっ」
艶が乗り出した声に藤田はさらに勢いをつけて腰を打ち込みだした。身体の深いところまで貫く藤田のペニスを、呼吸を合わせて粘膜で締め上げると、藤田は切羽詰まった声を上げた。
「御堂さんっ、出そう……、イく……っ!」
「あ…っ、藤田……っ、んあっ!!」
狭い肉筒の中で藤田の雄が大きくビクンと跳ねた。ドクンドクンと震えて、身体の奥底に熱い粘液が大量に撃ち込まれていく。
「御堂さん……」
「ん……ぁ、ふ…」
長い射精を受け止めていると、藤田にキスをせがまれて唇を合わせた。肉厚な舌が入り込んできて、口内を舐められる。唾液を注がれて溺れそうになったが、藤田は御堂が唾液を飲み込むまで許してくれなかった。こくりと喉を鳴らして唾液を飲み込むと、次の唾液を飲まされる。それを繰り返していると、藤田が軽く腰を揺らした。
「ん、……ぁ、あっ」
体内を抉られ擦られる感触に、絶頂を迎えた藤田のペニスが萎えるどころか逞しいままであることを思い知らされる。藤田は上体を起こすと、御堂の身体をぐるりと回して四つん這いにした。数回腰を小刻みに動かして中を探ると動作を大きくし、獣の体位で御堂を犯し始めた。
「あ、ああっ! く、……ふ」
先ほどの射精などなかったかのように、藤田は勃起したペニスを御堂にねじり挿れてくる。一回出したことで、藤田の荒々しい律動は、じっくりと官能を刺激する動きへと変化した。たっぷりと濡らされた粘膜を藤田の大きな亀頭が抉る。太い陰茎がアヌスを抜き差しするたびに、じゅぽじゅぽと泡立った精液が零れ落ちて、おぞましいほどの快感が結合部からさざ波のように広がっていった。
「御堂君、自分だけ楽しんでないで口で私に奉仕しなさい」
「専務……、んんっ」
いつの間にか大隈が御堂の頭の方で膝立ちをして、御堂の頭を掴んで自らの股間に向けさせた。命じられるままに、口を大きく開いて、興奮に漲った大隈のペニスを口に含む。舌を蠢かして、大隈の浮き立った筋をなぞって頬の粘膜で挟み込む。藤田に揺さぶられながらの口淫に大隈はしびれを切らしたのか、御堂の頭を鷲掴みにして、自ら腰を振って御堂の喉の奥へとペニスを突き入れてきた。
「ん、ぐぁ……っ! はあっ!」
「御堂さんっ、イイっ」
喉いっぱいに大隈のモノを埋め込まれて、息苦しさに目を剥く。苦しさにのたうつ粘膜が藤田のペニスを食い締めて、藤田が感極まった呻きを漏らした。
大隈と藤田は御堂の身体を上下から責め立てて、自らの悦楽を貪欲に目指していく。
苦しくて辛くて、御堂は眉をきつく寄せて、身体を痙攣させた。だが、この苦痛は妖美な快楽と紙一重だ。身体が暴走し始める。小刻みな電撃が背筋を何度も駆け抜け、絶頂の予兆が肌をざわめかせる。口とアヌスの二カ所で咥えこんだペニスがほぼ同時に精を放った。
「……ッ、んはっ、ンああああっ!」
濃い精液が上と下の粘膜に迸る。身体を一直線に貫かれて、御堂は激しく仰け反った。二人の絶頂にひとたまりもなく引きずられる。激しい悦楽の波に攫われて、熱い精液が御堂の精道を駆け上る。その入り口を塞ぐようにはめられたピアスに精液をせき止められて、御堂は悶えうった。ピアスと鈴口の狭間からぽたぽたと白濁が滴り落ちる。勢いよく射精するのと違い、隙間から漏らすような射精は長く辛い。イきっぱなし絶頂に苦しんでいる最中にも、藤田と大隈は、自分のモノを扱いて精液を絞り出すように御堂の粘膜に自身を擦り付けるように腰を打ち込んでくる。
あまりにも激しい行為に身も心も疲弊する。全身の肌が汗に濡れて光っていたが、それは大隈や藤田も同様だ。
「よかったぞ、御堂君」
「最高でした、御堂さん」
「……く、ぁ……」
それぞれ御堂に賛辞を述べて、二人がずるりと腰を引き抜いた。支えを失ってベッドの上に突っ伏した。
涎と精液に塗れた口許は酸素を取り込もうと大きく開いている。そして、藤田の極太のペニスを受け入れていたアヌスは、だらしなく綻んで真っ赤に充血した粘膜を晒していることだろう。
「ん……、ぁ、ああっ」
腸がひくりと蠕動して、緩んだアヌスから精液を零しそうになる。それを堪えようと尻に力を入れたが、麻痺したアヌスは言うことを聞かない。その時、足の間に気配を感じた。唐突にアヌスを広げて、異物が押し入ってきた。
「ひっ! ああっ!」
「零さないように手伝ってあげますよ、御堂さん」
固く球体の物体が指で奥までぐっと押し込まれる。驚いて肩越しに振り向けば、藤田がゴルフボールを手にいくつも持って、さらにもう一つ、御堂のアヌスにゴルフボールを食べさせようとしていた。
「藤田……っ! よせっ!」
「淫乱な御堂さんは、一個じゃ足りないでしょう?」
「や、あ、あああっ!」
御堂の制止も聞かずに、藤田が二個目を御堂のアヌスに含ませた。先に挿れられたゴルフボールが押されて、前立腺をゴリっと抉る。その刺激に、噛み締めようとした唇がほどけて、悲鳴を上げてしまう。
「まだまだ物欲しそうだな、君のここは」
別の声が聞こえて振り返れば、大隈が藤田からゴルフボールを受け取って、ローションを塗して、御堂のアヌスにヌルヌルのボールを送り込んだ。
「せ、んむっ! やめて、くださ……っ、あああっ」
グズグズに蕩けた粘膜に次から次へとゴルフボールがめり込んでくる。あられもない声を出しながら、すすり泣いて大隈と藤田に許しを乞う。だが、下腹部が不自然な形に盛り上がるまで、代わる代わる、その行為は続けられた。
「お腹、苦し……っ、痛っ」
無理やり広げられてパンパンに張った腸が苦しくて、脂汗が全身に浮き出る。
藤田がうつ伏せの御堂の膝を折らせて腰を浮かせた。大隈が脇から手を入れて御堂の腹を優しく擦る。
「こんなになって苦しそうだな」
「御堂さん、このまま産卵してみましょうか」
「ぐ……っ」
藤田の言葉に息を呑んだ。二人の前でゴルフボールを排泄しろと要求されているのだ。
腸管の中でうねるボールをすべて出してしまいたい。切実な排泄欲求を堪えて、アヌスはひくひくと痙攣している。このボールを排泄するのは凄まじい快感だというのは容易に想像できた。それでも、御堂は弱々しく首を振った。
「それだけは……」
未だに御堂に根強く巣食った矜持が、屈しそうになる心を押しとどめた。だが、大隈と藤田は御堂を許すことなく、腰を上げた体勢を保たせ続ける。ニヤニヤ笑いながら、御堂の身体に手を這わし、乳首のピアスを摘まみ、ペニスのピアスを捩じる。御堂が無様な体を晒すのを心待ちにしているのだ。
二人に全身の性感帯を弄られ続けて、焦らしに焦らされ、ついに御堂は欲求に屈した。
「見るな、あ、や、んああっ!!」
ゴルフボールが弾ける勢いでアヌスから飛び出す。精液混じりのローションが卑猥な音を立てながら、ゴルフボールと一緒に排泄されていく。身体の内側から焼き切れるような恥辱と悦楽に御堂は背を引き攣らせながら、ボールを産卵させられた。望んでいた以上の凄まじい快楽に、目の奥に火花が散った。嬌声とも悲鳴ともつかない声が迸る。それはドライで絶頂を迎えるような感覚で、ずっと高みに縫い留められたように手足の先が痙攣し続けた。
腰が落ちそうになると藤田が腹に回した腕で再び高く掲げられて、御堂が排泄する様を鑑賞される。腹の圧が緩まると、次は下腹部を押されて最後の一個まで無理やり排泄させられた。
「ん……、うぅ……」
快楽の波が引いて、惨めさが込み上げる。嗚咽を混じりの呻き声を漏らしたが、藤田と大隈の欲情を煽る結果にしかならなかった。
「次は私の番だ」
ボールを排泄して空虚になった肉筒に、今度は大隈が押し入ってきた。
淫蕩に爛れた粘膜は収斂しながら大隈をどこまでも深く咥えこんでいく。漏れ出た声は、自分でもゾッとするほどの喜悦が滲んでいた。
「んはぁ、……ぁああ、ん……ふっ、専務……っ」
「御堂さん、俺のことも見て」
御堂の顎を掴んだ藤田が欲情に昂る股間を見せつけてくる。濡れた唇を大きく開いて、真っ赤な舌を出した。壮絶な色気に、藤田が炎に引き寄せられる虫のように、自分のペニスを差し出してくる。
藤田の向こうの窓の外には闇が広がっている。
まだ夜は始まったばかりだ。
この一晩でどれほど犯されるのだろう。
淫靡な予兆に、全身の神経が激しく疼いた。