top of page
無限の牢獄

「せっかくのGWなのに、外出自粛だそうですよ」

 

 そう、御堂の目の前に立つ男はつまらなそうに言った。

 

「まあ、あなたは外に出る必要はありませんものね」

「ふ、……っ、んっ」

 

 返事代わりに精一杯、目に力を込めて睨み返した。罵声を浴びせ、殴りかかりたいところだが、御堂は口枷と手枷を嵌められ、窓枠に手をつながれた状態で拘束されている。唯一自由になるのは視線位だ。

 この男に自室に監禁されてからどれほど経ったのか、時間の感覚はとっくに希薄化していたが、今の会話で、世間はGWを迎えたのだと知った。

 

「ああ、心配しないでください。俺はあなたに付き合いますから。こんな状態では独りで過ごせませんものね」

 

 憎しみを込めた御堂の視線も薄い笑みで受け止められる。克哉は御堂の前に屈んだ。金属のバーに寄って大きく開かされた股間。脚の間にはグロテスクなバイブの柄が覗き、不規則な振動でもって御堂を苛み続ける。克哉がそのバイブの柄を掴みずるっと大きく引き、そして、だらしなく緩んだアヌスへと突き立てた。

 

「んはっ! う……ッ、ぐぅ」

 

 身体の深いところが抉られ、鮮烈な痛みの快楽の波が身体の中心を駆け抜ける。四肢を硬直させ、悲鳴を上げようとしたが口枷が声を封じ、くぐもった息だけが漏れた。佐伯克哉は御堂の反応に満足し、耳元に口を寄せた。

 

「たっぷりとこの長期休暇を楽しみましょうか」

 

 嗜虐に満ちた低い声が鼓膜に注がれた。

 

 

 

 じゅぷじゅぷと卑猥な水音と肉が肉を打つ甲高い音が鳴り響く。

 

「あ……っ、くぅ、ん……よせ……っ、あああ」

 

 はち切れんばかりの怒張が深々と御堂を貫く。亀頭の張り出したエラが快楽の凝りを抉ると苛烈な刺激が御堂の全身を駆け巡った。

監禁されていた部屋からベッドに移され、手はベッドヘッドに繋がれたものの口枷と足枷を外された。こうして、拘束を緩められたのもつかの間、克哉の気の赴くままに昼夜の区別なく犯されていた。

 四つん這いの姿勢で克哉に背後から穿たれる。

 

 ――もう、無理だ……っ。

 

 望まぬ快楽を拒絶しようにも、克哉によって躾けられた身体は容易に陥落する。びくびく、と疲れ切った四肢が力なく戦慄(わなな)いて、御堂は絶頂を極めた。御堂は精を吐き出すため腰を前に突き出そうとする。だが、克哉に深く貫かれた腰は高く掲げられたままで、戒められたペニスは射精を許されず、御堂は悲鳴ともつかない嬌声をあげながら背をしならせた。

 

「なんだ、またドライでいったのか」

 

 克哉が腰の動きを止めると、手を御堂の股間に伸ばして御堂のペニスを確認した。指先が張りつめた筋を辿る。その動きに反応してぴくぴくとペニスが震え、鈴口からぽたぽたと精液混じりの粘液が滴り落ちた。

 

「ぁあっ」

 

 鈴口を詰めの先でくじかれて、その痛みにさえ御堂は艶めいた声を上げた。いい加減、解放してくれるのかと淡い期待を抱いたが、克哉はすぐに手を離した。御堂のそれには徹底して刺激を与える気はないらしい。男としての絶頂を許されず、ひたすらにドライでイくことを強要されている。

 

「節操のない身体だな」

「も……やめ、あ、くあっ、ああっ」

 

 克哉は喉で嗤うとふたたび動きを再開した。絶頂の余韻に浸る間もなく、新たな刺激を容赦なく与えられ、御堂は苦悶と快楽で顔を歪ませた。

 数え切れないほど追いやられた極みだが、慣れるということはない。身体の深いところをまさぐられて得る絶頂は何度味わっても、おぞましいほど甘美で、屈辱的だった。

 克哉の怒張によって目一杯にこじ開けられた穴は貪欲に克哉を咥えこんでいる。克哉が突き入れるたびに、精液とローションが混ざった粘液が泡となって溢れ落ちていった。

 絶え間なく犯され続けて、意識は靄がかかったようにはっきりしない。あとどれほどでこの拷問から解放されるのかも想像がつかなかった。

 克哉が深く上体を被せ、ベッドヘッドと御堂の手首をつなぐ鎖を外した。両手首はベルトでまとめられたままだが、これで身体を自由に動かせるようになる。とはいえ、凌辱され続けた身体に力は入らず、逃げ出す気力はどこにもなかった。

 克哉はさらに御堂のペニスを戒めていた細い革ベルトを外すと、背後から御堂を抱えたまま上体を起こした。あぐらをかいた克哉の上に乗せられ、ずくり、と自重で克哉の雄を根元まで呑み込んでしまう。

 

「ぐ……、ぁ、あ……」

 

 体内をみっちり埋める克哉の肉塊、その脈動さえ敏感に感じ取ってしまう。熱っぽい吐息が首筋を撫でる。イきっぱなしで辛いのに、結合部からさらなる淫らな熱が生まれては弾け、下腹部へと流れ込んでくる。自分のペニスがカッと熱くなる。今や御堂の射精を阻むものは何もないのだ。爆発しそうなほど張りつめ、そそり立つペニスが、あと一歩の快楽を求め、期待に打ち震える。ところが、克哉は動かなかった。御堂に肉の楔を打ち込みながら、一切動こうとしない。

 突如として刺激を断たれ、御堂は困惑した。ようやく射精を許されたのだ。身を焦がすような重ったるい熱は、御堂の体内で出口を求めて渦巻いている。御堂は自ら腰を動かそうとして、辛うじて自制心で押しとどめた。

 

「どうしたんですか、御堂さん? 自分で好きに弄っていいんですよ?」

「な……」

 

 一瞬、何を言われたかわからず、言葉を詰まらせた。だが、すぐに克哉が何を言わんとしたのか理解し息を呑む。克哉は御堂に、男に犯された状態で自慰をしろ、と言っているのだ。どれほどの恥辱なのか、考えただけで死にたくなる。

 動けなくなった御堂をよそに、克哉が御堂の手を掴んで、いきり立ったペニスへと導いた。自分の指がペニスに触れる。克哉が御堂の手を上下に動かし、ペニスを根元からなぞり上げた。それだけで、待ち望んでいた刺激に「ひぁっ」と仰け反らした。

 限界まで充血し、生々しい赤さを見せるペニス。克哉が御堂の手を上下に動かして、快楽を煽ってくる。そのもどかしさにたまらなくなって、自ら指を絡めた。

 

「んあ、は……、ぁ、あ…」

 

 恐る恐る触れただけなのに、下半身が痺れるような快楽が走る。あまりの気持ちよさに感じ入ったような息が漏れた。克哉の好きなようにされるのではなく、自分で自分の良いように官能を高めていく。坐位で背後から御堂を抱く克哉には、御堂の自慰を直接見られているわけではない。そんな緊張感の小さな綻びが御堂の手の動きをより大胆に卑猥にしていく。

 悦楽が燃え上がると同時に、激しい羞恥に身悶えした。克哉に貫かれながら、自ら快楽を求めている。それでも、今そこにある果てのない絶頂を無視することなどできない。自身を扱く手の動きに合わせて、腰が震える。粘膜が激しく収縮し克哉のペニスを揉みしだく。

 

「イきそうか?」

 

 背後から囁かれる言葉に無意識にうなずいていた。口からは甘い呻きが漏れる。克哉はクスリと笑って、御堂の快楽を後押しするように、御堂の乳首をきつく摘み、きゅっとねじった。

 

「ひっ! や、あ、あああああっ」

 

 突如として与えられた鋭い痛みが風船のように膨らんだ快楽を貫いた。悦楽が破裂する。とてつもなく大きな極みの波に呑み込まれ、なすすべなく翻弄される。精液が派手にしぶき、御堂は四肢を突っ張らせた。自ら導いた絶頂はあまりにも罪深く、狂おしいほどの甘美さだった。ガクガクと全身が震える。同時に、身体の奥深いところで克哉の熱が弾けた。意識が白み、そして闇に包まれた。

 

 

 

「もう、GWも終わりか……」

 

 克哉がつぶやく声に意識がうっすらと浮上した。御堂はベッドの上に拘束されたままだった。目を開こうにも瞼が重く、指一本も動かすことが出来ない。だが、克哉の言葉に、御堂は胸の内で小さく安堵の息を吐いた。これで克哉の絶え間ない責めから解放される。

 

「ああそうだ、御堂さん」

 

 克哉の顔がこちらを向く気配がした。びくりと身体が慄く。

 

「ついに、MGNもテレワークが導入されたんですよ。これからはずっと一緒に居られますね」

 

 克哉は笑った。その冷え冷えとした笑い声は部屋に佇む闇をより暗く濁らせていった。

 

 

END

bottom of page