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秘めごと

「こんばんは。御堂部長」
 背後からかけられた声に全身の毛がそそけ立った。
 嫌な汗が背中を伝う。
 会社から帰宅し、部屋の扉のドアノブに手をかけた瞬間だった。
 服の生地が触れ合うかの位置で背後に立たれて、逃げ道を塞がれる。
 そのまま身体が固まって動かせなくなる。
 これでは蛇に睨まれた蛙と変わらないではないはないか。
 その怯えを悟られないように、腹の底に力を入れて、低い声を出した。
「佐伯……っ、何をしに来た」
「御堂さんと親睦を深めようと思いまして。まあ、ここではなんですから、中に入れていただけませんか」
「馬鹿なこと言うなっ!」
「部下の頼みと思って願いします」
 白々しい言葉を吐きながら、克哉が顔を耳元に寄せて囁いた。
 迫る気配から逃れようとしたところで、ドアノブにかけていた手に克哉の大きな手が被さった。そのまま、自分の手ごとドアノブを押し下げられる。
「やめろっ!」
「御堂さん、ここで、俺と密着しているところを見られたいんですか?」
 克哉がわざとらしく背中に身体を押し付けてきた。スーツを通じてその熱が伝わるかのようだ。そのまま、耳元をぺろりと舐めあげられる。濡れた音とともにぞわりと神経が凍てつく。
「……っ!」
「ほら、早く中に入りましょうよ」
 背後の克哉がくくっと喉で低く嗤う。動きを促すように、ドアノブに押さえつけた手を握られた。
「放せっ!」
 弾かれたように、その手を振り払い、背後の克哉を突き飛ばすように体を捩って、ドアを勢いよく開けた。
 素早く身体を滑り込ませてドアを閉めようとした寸前に、鈍い衝撃とともにドアの縁に足を差し込まれた。磨かれた革靴がドアの動きを阻む。
「冷たいじゃあないですか、御堂さん」
 ドアに手がかかり、大きく開かれた。自分に向かって伸ばされる手から逃れようと身体を返すが、それよりも素早くジャケットの裾を掴まれた。背後に引かれる力と前に進もうとする慣性力にバランスを崩し、玄関に倒れ込んだ。
 伏せた身体の上に克哉が馬乗りになる。
「御堂さん、そんなに焦らなくても。俺はもっとじっくりと愉しみたいんですけどね」
「どけっ!!」
 必死の抵抗を力ずくで封じられながら、ジャケット、ベストと次から次へと脱がされる。
 シュッと衣擦れの音がしてネクタイを引き抜かれた。そのまま背後に両肘を重ねた状態でネクタイできつく縛り上げられる。
「くそっ!やめないかっ!!」
 悪態も構わず、克哉は手慣れた仕草でシャツのボタンを次々に外していくと、ズボンに手をかけた。ベルトをしならせて引き抜かれる。
 ズボンを脱がそうと、克哉が御堂の背中から腰を浮かせた瞬間、渾身の力で身体を捩じって克哉を振り落とした。不自由な身体のまま、膝に力を込めて立ち上がりリビングに駆け込んだ。
 そこでハッと気付いた。両手を背後に拘束されて、ここからどこへと逃げればいいのだろう。
「御堂さん、どこに行く気ですか?」
 悪意が滴り落ちそうな愉しげな声が廊下からかかり、びくりと身体が慄いた。
 恐る恐る振り向けば、込み上げる笑いに肩を揺らしながら、ゆっくりと克哉がリビングに足を踏み入れた。


「く……う、ぬ、けっ」
 両手は背中に拘束されたまま、更に両足首をバーで固定されて、足を閉じることが許されない。うつ伏せにされた無様な格好で、突き出した裸の尻を克哉の指が嬲る。
「今日は、何をして遊びますが」
 克哉を拒もうときつく閉ざした窄まりをこじ開けるように、長い指が侵入し、中を探り始めた。
「ぅあっ、……誰が、貴様なんかと遊ぶかっ!!」
「へえ、御堂さんは一人遊びの方が好きなんですか。どんな風にするのか見たいなあ」
 わざと曲解して、克哉はニヤニヤと唇の端を歪めた。二本目の指を突き入れられる。両の指で身体の内にある、快楽の凝りを撫でられた。身体を貫く鋭い刺激に露骨に腰を跳ねさせた。
「ひあっ!!」
「御堂さんは一人でするときは、後ろも弄るんですか?」
「下衆が……っ!」
「もしかして、この前、後ろを覚えたばかりですから、まだ後ろを使った自慰をしたことないとか」
「っ、……や、め」
 三本目の指が潜り込んだ。ぐいぐいと狭い内腔を拡げるように指が蠢く。その異物感と刺激を耐えようと、歯を食いしばった。
「じゃあ、俺が教えてあげますよ。後ろを使った自慰の仕方を」
「ふざ、けるな…っ」
 押し殺した笑い声を漏らしながら、ずっと指が抜かれた。
 克哉が背後で自分の鞄を開ける気配がする。鞄の中から何かを取り出したようで、それが何なのか分からずに、またそれを拒むことも出来ずに、心臓が早鐘を打ち出した。
 克哉の片手が御堂の双丘を開いた。解されたアヌスにチューブの細い先端部分が差し込まれ、中にぬめるクリームのようなものが注入された。たっぷりと入れられて、その冷たさに下腹部が重く痺れる。
「ひっ!……何、をいれたっ」
「尻を女のアソコにする塗り薬ですよ。すぐに疼いて我慢できなくなる」
「な……っ、ふ……、ああっ」
 チューブが引き抜かれて、克哉の指が代わりに入り来んだ。卑猥な音を立てながら浅いところに溜まっていたクリームを奥深くへと丹念に塗り込んでいく。
「あ、や……」
 その薬の効果はすぐに現れた。全身がカッと熱くなる。肌が紅潮し、汗を刷きだした。
 そして、克哉が指を入れているアヌスから下腹部の深いところがじわりと疼きだし、そこに滾る熱の塊を抱えたような感覚がせり上がってくる。内部がうねって、克哉の指に絡みだす。
「もう、効いてきたのか。まあ、あんたは素質があるからな」
「動か、すな…っ」
 克哉が指をちょっと動かしただけで、背筋を耐え難い刺激が走る。吐く息に声が混じりそうになるのを堪えた。内腿がピクピクと痙攣する。
 体内に埋められた克哉の指を奥へと引き込もうと粘膜が喘ぎだした。だが、克哉はあっさりと指を引き抜いた。
「ここまでだ。俺があんたを気持ちよくしたら、自慰にならないからな」
「ふ、…なに…?」
 その抜かれる指にさえ感じてしまい、追いすがるように身体の中がキュッと締まった。
 克哉は鞄の中から再び何かを取り出すと、見せつけるように顔の前に持ってきた。
 それは、男性器を模したバイブだ。克哉は目の前でそのバイブに、他方の手に持った容器からローションを垂らした。粘性のある液体がトロトロとそのバイブを濡らしていく。
 そうしているうちにも、下腹部にこもった熱はどんどんと勢いを増し、身体を内側から炙り始めている。アヌスの奥はむず痒いような疼きが強さを増してきていた。
「……く、……うぅ」
「御堂さん、これが尻に突っ込まれたら気持ちいいと思いませんか」
 バイブを鼻先につきつけられる。
 嫌悪しか沸かない玩具から目を逸らしたいのに、視線が縫い付けられてしまう。
 あれを尻に入れられて、深く抉られたら、どれほどの刺激が与えられるのだろう。この疼きに応えてくれる以上の快楽が待っているに違いない。溢れた唾液を、こくりと小さく飲み込んだ。
「そんな物欲しそうな目で見ないでください」
「ち、違……っ!」
 揶揄する言葉に、溶けかけた理性を取り戻す。こんな卑劣な男に屈するなど、恥辱以外の何物でもない。
「貴様の、言いなりになど、なるものか…っ!」
「ふうん。まあ、御堂さんの好きにしてくれていいんですけどね。だって、これは自慰ですから」
 そう言って克哉は背後に回った。カチャカチャと音がして、バーを弄られる感触がある。
 少しして、伏せていた身体を、肩を掴まれてぐいと起こされた。
 膝立ちの体勢にされる。肩越しに背後を振り返って、青ざめた。バーの中央に先ほどのバイブが上向きで固定されている。腰を落としたらアヌスを深く貫くだろう。
「どうです?簡単でしょう。気持ち良くなりたければ腰を降ろせばいい」
「誰が……!」
 憎悪を滾らせた眸で克哉を睨み付けた。だが、その視線は酷薄な笑みで受け止められる。
「ああ、御堂さんは前を縛られるのも、乳首を弄られるのも好きでしたね」
 そう言って、克哉は鞄からいくつか道具を取り出した。それを見て言葉を失った。克哉はそれらを床におもむろに並べて、ゆっくりと手に取った。
 一つ一つ御堂に装着していく。ペニスベルトで、漲った性器の根元をきつく戒めた。そして、尖りきった両の乳首にローターを取り付けられる。
 更には、三脚をセットするとそこにビデオカメラを据えた。録画中の赤いランプが点滅するのを見て取り、背筋がぞっと凍えた。
「……ぅっ、や、だ……、くそ……っ!」
 乳首をローターが甚振り、張り詰めたペニスにベルトが食い込む。そして、アヌスの内側から身体の奥底に快楽を求める無数の虫が蠢くような耐え難い欲求に突き上げられる。
 身体を支える膝の筋肉が震える。
 だが、決して克哉の思い通りにはなりたくない。眉根をきつく寄せて、瞼を固く瞑る。唇を噛みしめて、下肢を強張らせた。
「……ふっ…」
 身体の内外を焦らし続ける刺激から意識を逸らそうと試みる。だが、御堂の意思とは裏腹に、感覚だけは鋭敏になっていく。
 熱がこもった吐息が喘ぎとして零れ落ちそうで、淫らに弾みかける呼吸を押し殺す。
「それでは、御堂さん、どうぞごゆっくり。俺はちょっと席を外しますから」
 克哉は身体を細かく痙攣させて、疼きに耐える御堂をしばらく眺めた後、踵を返して部屋を出て行った。
 少しして、玄関の扉が開閉される音が響いた。
 一人部屋の中に取り残された。ジーっという二つのローターの振動音と短く継ぐ呼吸音が反響する。
 身体を炙る熱は次第に強さを増してきていた。下腹部の奥が疼いて堪らない。
 このまま、いつまで放置されるのだろう。
 股関節が軋むほど開かれた足が辛くなってくる。この焦らされた熱は鎮火されることを知らない。
 しかし、自分を録画しているビデオカメラの前で、ましてや克哉の前で、痴態を晒すことなど到底許しがたい。
 それでも、いつまでこの責め苦を耐えればいいのだろう。
「は……ぁ、……んっ」
 無駄だとは知りつつも、両胸を甚振るローターの振動から逃れようと、上半身を捩った。額に大粒の汗が浮き出ては流れ落ちていく。
 いつの間にか口はしどけなく開いて、荒い呼吸を繰り返していた。
 熱と苦痛に焦らされた意識が緩みかけて、少しずつ腰が落ちていく。
「ん、ああっ!」
 バイブの先端がアヌスの表面に触れた。たったそれだけで、全身を痺れさせるほどの愉悦が四肢の末端まで走った。
――嫌だ、嫌だ。
 拒絶に激しく頭を振る。だが、一度溢れだした快楽への渇望はとどまることを知らない。足の力が抜けた。バイブにまたがったまま腰が深く沈み込む。太いバイブがアヌスに呑み込まれていくと同時に、異物を食まされる違和感以上に、脳天を貫くような激しい快楽に背を仰け反った。
「あ、あああっ!!」
 大きな声を上げて、ハッと我に返った。
 自分のあさましい行動に激しい羞恥を覚えて、バイブから逃れようと腰を上げるが、その引き抜かれる刺激さえ耐え難い悦楽となって、身もだえる。
 その快楽の波が去ると、再び渇きに苛まされる。一度覚えた快楽はすぐ手の届くところにある。ぎりぎりの崖っぷちで踏み止まろうと自制心を掻き集めるが、その理性さえぐずぐずに溶けてきている。
 もう、耐えられない。
 膝が崩れて、ずくりとバイブが突き刺さった。
「くあっ!あ、…ふあっ!!」
 視界が真っ白に染まって弾けた。思考が焼け爛れる。鳥肌が立つような激しい熱がアヌスから広がって、全身を侵す。

 身体は貪欲に刺激を求めている。快楽の波が途切れる前に、次の快楽を求めて、一心不乱に腰を振り立てた。自ら角度と深さを調整して、一番気持ち良い場所をバイブで抉る。
 快楽で気が狂いそうになる。絶え間なく絶頂を迎えているのに、ペニスを戒めているベルトのせいで射精を許されず、白濁混じりの蜜が滲み滴る。その苦しさに悶えた。だが、その苦痛さえも快楽へのより強い欲求に変換される。
 バイブで快楽の凝りを深く抉っては、引きずり出す。
 快楽と苦痛に啼きながら、その淫らな行為に耽っていると、低く掠れた声が降ってきた。
「随分とよさそうですね」
「さ、え……っ!」
 顔を上げれば、目の前に克哉が立っていた。
 アヌスにバイブを奥深くに咥え込んだ状態で向かい合わせとなる。冷徹な光を湛えた眸で睥睨され、冷水を浴びせられたように目が醒めた。
「後ろを使ったオナニーが上手くなったじゃないですか」
「ち……違、うっ!」
 克哉に痴態を見られたという衝撃に力が抜けて、腰が砕けたまま力が入らなくなる。バイブの上に尻を落としたまま、動けなくなった。屈辱に眼差しを深く伏せて、身体を打ち震わせた。
「何が違うんですか。イきたいがために、自ら尻を振って」
「これは……お前がっ」
 歩みを寄せた克哉が御堂の顎に指を伸ばした。顎を捉えられて、恥辱に染まる顔を上げさせられる。涙を堪えて眦を赤く染めながら、残された矜持を振り絞って克哉を睨み付けた。
 克哉の指が、屹立した御堂のペニスの先端を弾いた。小孔に溜まっていた蜜がこぼれる。アヌスを穿たれるのとはまた違う刺激に、戦慄のような快感が走り、身体を大きく揺らした。それが身体の中のバイブを動かし、がくんと背中を反らせた。
「ひっ!!…あああっ!」
「出したくてしょうがないだろう?俺に扱いて欲しいか?それとも自分で扱くか?」
「嫌だ……、触るなっ」
 蕩けた思考で、克哉に何を聞かれているのか理解できないまま、条件反射で激しく首を振って拒絶する。
「強情だなあ」
「あ、ああっ、や、めっ」
 克哉は苦笑しながら、戒めたままのペニスを擦りあげた。陰嚢を揉みこみつつ、根元から先端まで力強く扱きあげる。
 解放できない苦しさに涙が零れた。克哉にペニスを刺激されるたびに腰が揺らめいて、足のバーに固定されたバイブが中を穿つ。時折、乳首を挟むローターを爪で弾かれで、その刺激に悶えうつ。
 中と外、前と後ろを責められて、意識をぐちゃぐちゃに掻き回される。
「さえっ…ひ、あ、あ、触、るなっ」
 自分が何を叫んでいるのかも分からないまま、克哉の手淫に翻弄される。
 手が自由になるのなら、ペニスを戒めるベルトを外して、思う存分溜め込んだ欲情を吐き出したい。それでも、必死に抗った。
「嫌、…だ」
「そこまで言うなら、触りませんよ」
「ぁ……」
 克哉の手が離れたときは、思わず切ない声が漏れた。その声に、克哉がレンズの奥の目を眇めた。
「どうして欲しいんです?ちゃんと言葉でお願いしないと」
「ふ…や、だ……や」
 理性はとっくに砕け散っていたが、自分がどれほど浅ましい姿を晒しているのか、それだけはおぼろげに分かった。目の前の男が元凶なのだ。この男の存在を認めることはできない。
 快楽を凌駕する苦しさと悔しさに襲われて、すすり泣きながら首を振った。
 うわ言の様に「嫌だ」と呟きながらすすり泣いていると、克哉が呆れたように言った。
「仕方ないですね。今回は手伝ってあげますよ」
 克哉のその言葉に、無意識のうちに期待に慄いた。これでこの責め苦から解放される。
 バーから足の戒めを外されて、バイブをずずっと引き抜かれる。下肢が楽になり安堵としたの束の間、身体を仰向けに倒されてそのまま膝を宙で折られて、尻を高く持ち上げられた。自分の身体を両肩と肩甲骨で支える辛い体勢で固定される。
 額には、整えられていた黒髪が幾筋も汗で張り付いている。
 欲情と恐怖に薄目を開ければ、自分の反り返ったペニスが目の前にあった。顔の真上に勃起したペニスがある。克哉は片手で器用にペニスのベルトを外した。戒められていた部位に血液が流れ込み、その小孔からせき止められていた蜜が溢れだす。白濁した蜜が、自分の顔や顎に滴った。
「このままイったら面白いものが見れそうだ」
「あ……さ、えきっ!」
 ペニスの先は自身の顔に向いている。ひくひくとペニスが解放を求めて震えるのが見て取れた。黒目だけ動かして横を見れば、自分自身に大きなレンズを向けたビデオカメラは録画中のランプが点灯したままだ。
 このまま痴態を記録され続けて、また、それをネタに克哉に脅され続けるのだ。
 それは分かっているのに、その恥辱を想像すると、身体の中の熱が淫らにうねる。思考は散り散りになって、正常な判断など出来るはずもない。
 克哉が大腿部を押さえ込みながら、自分のそそり立ったペニスを取り出して尻の狭間に押し当てた。唇を釣り上げて歪んだ笑みを端正な顔に浮かべると、御堂の身体を二つ折りにするように伸し掛かって、滾る肉塊を突っ込んだ。根元まで一息に捻じ込まれる。きつい体勢であったが、溜め込んだ快楽がペニスに向かって流れ込んでいく。
「ひっ!あ、あああっ!!」
 イきたくない、この男の前ではイきたくない。
 そう自身に言い聞かせて下腹部に力を込めて堪えようとした。だが、玩具にはない熱と脈動。その生々しい凶器で穿たれて、深く抉られた瞬間、つま先まで突っ張らせて爆ぜた。
 自らのペニスの先端から、精液が噴き出すのを目の当たりにする。自身の顔も髪も身体も全てを勢いよく汚して、たっぷりと濡らしていく。
 ムッとするほどの濃い精臭に包まれた。身体をびくびくと痙攣させて、絶頂の余韻に戦慄いていると、克哉が腰を使いだした。達して敏感になっている身体を蹂躙しつつ、自分の欲望を辿っていく。克哉が腰を激しく突き入れるたびに、ペニスが跳ねて押し出されるように残滓を散らした。
「いい顔になったじゃないか」
「抜、け…やめ、ろ」
 しどけなく開いた唇に、自らの精液が飛び散った。克哉が獰猛な眸を御堂に向けつつ、身体を貪っていく。その有様は肉食獣のそれだ。
「…あ、ああ……イ、く…」
 揺さぶられながら、再び達した。口の中まで精液の味と匂いが満ちる。
「最後の一滴まで絞り出してあげますよ」
 斟酌なく深いところを穿たれながら、身体は立て続けに絶頂を迎えて痙攣し続ける。
 自分はどこまでこの男に食らい尽くされるのだろう。その恐怖に鳥肌が立つ。
 絶望とともに、意識が深淵に呑み込まれた。

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