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​堕落
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 その日、御堂は佐伯に連れられて地上へと出た。
 クラブRから出るのはいつぶりだろう。日の差し込まぬクラブRでは昼夜の区別がなく、意識がある間はずっと拘束具だけを身に付けた裸同然の姿で、命令されるがままに男たちの欲望に奉仕させられていた。それが、突然佐伯に呼び出されて、スーツを着させられたのだ。
 上質な仕立てのスーツはオーダーメイドで設えたかのように、御堂の身体にぴったりと合っていた。そして、髪型もきっちりと撫でつけられて磨かれた革靴を履かされる。大きな姿見の前に立たされて自分の姿を確認すれば、鏡の中には一分の隙もないエリート然としたビジネスマン姿の自分がいた。佐伯は満足そうに微笑んで言う。

「懐かしいだろう、御堂? かつてのあんたを思い出すじゃないか」
「はい、ありがとうございます」

 反射的に答えていた。佐伯の言うとおり、御堂の姿はクラブRの奴隷に堕ちる前の自分を彷彿とさせた。だが、だからこそ落ち着かなかった。ワイシャツの下には淫らに躾けられた身体がある。いまさらスーツを着せて外見だけ取り繕って、佐伯は自分に何をさせたいのか。御堂を郷愁に浸らせたいわけではないだろう。何かしらの冷酷で残忍な計算があるのだ。
 佐伯は唇の片端を冷ややかに吊り上げる。

「じゃあ、久しぶりに外で働いてもらおうか」

 そう言って、佐伯は御堂をクラブRから連れ出した。Mr.Rが運転する黒塗りの車は高層ビルが立ち並ぶ道を滑らかに走り、目的地の前で止まった。後部座席に並んで座っていた御堂は佐伯と共に降りて、目の前にそびえたつビルに息を呑んだ。そこは良く見知った場所だった。MGN社、かつての御堂の職場だ。
 御堂同様スーツ姿に着替えた佐伯は、ためらうことなく中に入っていく。どこから手に入れたのか社員証を二つ懐から取り出し、そのうちの一つを御堂に手渡すと悠々と警備員が常駐するエントランスを抜けてエレベーターホールへと向かった。まだ朝の早い時間帯で、社員の姿もほとんどない。知り合いに会うかも知れないと頭の片隅で思ったが、御堂もまた黙ったまま佐伯に付き従った。渡された社員証を見れば、MGN社のロゴと御堂孝典のフルネームが記載されていて、まさしく以前の自分の社員証だった。

「今日のあんたの職場はここだ」

 佐伯は資料室や倉庫が並ぶ地下階でエレベーターから降りると、奥まったところにある多目的トイレへと向かった。その個室に御堂を入れると『故障中』の札を入り口に立ててドアを閉めた。そして冷たく命じる。

「服を脱げ」
「はい」

 ためらう素振りを見せず、御堂は着込んだスーツを脱いだ。裸になって佐伯の前に立つ。睫毛より下の体毛はすべて処理されて、両胸には銀のピアスが輝いている。常時ピアスの重みでいたぶられているそこは赤く尖っていて、ワイシャツの生地に擦れるだけで淫らな感覚を呼び起こした。ここに来るまでの間、必死に堪えていたのだ。
 かつての職場のトイレでいったい何をさせられるのか。
 居心地の悪さと不穏な予感に苛まされながらも、指示されるがままに壁に両手をついて、腰を突き出す体勢を取る。開いた足の間に立った佐伯の手が御堂の尻を鷲掴みにした。次の瞬間、アヌスに熱く硬い肉塊が押し当てられて、無造作に突き入れられた。

「ぅ―――っ」

 日々蹂躙されているそこは乱暴な侵入も拒むことなく受け入れてしまう。それでも窮屈な場所を無理やり拡げられる苦しさに御堂は呼吸を浅くした。佐伯は御堂を性欲のための道具のように扱い、容赦ない蹂躙を繰り返すが、躾けられた身体はそんな手酷い扱いにも昂ってしまう。声が漏れないように手の甲で口を塞ぎ、喘ぐ声を押し殺した。

「勝手にイくなよ」

 臍に付くほど反り返ったペニスは先端から蜜を滴らせている。だが、佐伯の許可なしに達することはできない。御堂は必死に快楽を逃そうとするが、佐伯はお構いなしに御堂の中を抉り続ける。

「ふ、――ぁ」

 ぐぐっと佐伯の腰が奥まで差し込まれた。抜き差しが細かくなり最奥に熱を注ぎ込まれる。その熱にさえ感じてしまい、引き抜かれるペニスに喪失感めいた寂しさを感じていると、代わりにぐっと異物が押し込まれた。それがアナルプラグだとすぐに気づいたのは、なじんだ感触だからだ。
 佐伯は自分の服の乱れを素早く直すと御堂に言った。

「今日一日は、お前をMGN社の部長に戻してやろう」
「私を、部長に……?」

 クラブRに堕ちる前、御堂はMGN社の開発部部長だった。だが、もうそれは遠く色褪せた過去のようで、現実感に欠けている。
 裸のまま後ろ手に手錠をかけられて、御堂はトイレの便座の上に座らされた。足を大きく開くように命じられ、そのとおりにすると、内腿に黒いマジックで一本の線を描かれた。そして、絶頂を許されないまま腫れているペニスを掴まれる。佐伯はジャケットの懐から球が連なる形の金属のブジーを取り出した。それを手慣れた手つきで御堂の尿道口から押し込んでいく。

「――――ッ」

 すでに数えきれないほど使われたブジーだがいまだに慣れるということはなく、敏感な粘膜を冷たく硬い金属に犯されるおぞましさに御堂は身体を固くした。
 佐伯はブジーを深く差し込み、一番苦しいところにブジーの先端を留め置いた。

「お前は我慢が効かないから栓をしておいてやった。自分の立場を忘れないようにしろ」
「あ、ありがとうございます」

 奴隷として躾けられた御堂の返事に佐伯は喉を短く鳴らすと、御堂の首に社員証をぶら下げた。そして、アイマスクを付けられ、視界が塞がれる。

「しっかり働くんだぞ」

 そう言い置いて、御堂を残したまま佐伯は部屋から出て行った。



 MGN社の地下のフロア、滅多に社員が利用しないトイレとはいえ、全裸のみだりがましい状態で拘束されまま放っておかれて、御堂は心細さに襲われる。
 なぜMGN社に連れてこられたのだろうか。それも、こんな姿でトイレの個室に放置されて。
 佐伯の命令は絶対だ。逆らうことなどできないし、疑問を持つことも許されない。佐伯は御堂の主人であり、御堂は心からの服従を誓っている。すなわち、御堂は佐伯の所有物だ。だが、理由も分からずにこの場に連れてこられて、そのまま捨てられるのではないかと不安の渦に流されそうになってしまう。
 外資系企業が所有するビルディングだ。たかだかトイレといえども瀟(しよう)洒(しや)な空間で、空調は完璧に管理されていて、暖房便座もちゃんと暖かい。それでも少し動くとペニスを貫いているブジーやアヌスに仕込まれたアナルプラグが動き御堂を内側から責め立てた。
 その刺激に気を取られていると、不意に、ドアが開くとともに誰かが入ってくる気配がした。そこに誰がいるのか分からずに身を固くするが、気配は御堂へと歩みを寄せて、御堂の全身を舐めるように這う視線を感じた。

「やっぱり、御堂部長だ!」

 視界はまったく効かなかったが、その声と口調が記憶を呼び起こした。

「藤田……?」
「そうです、覚えててくれました? うれしいなあ」

 快活な声が返ってくる。藤田というのはMGN時代の御堂の部下で、新人時代から目をかけていた社員だ。そんな藤田を前にして、自分がどんな格好をしているのか思いだし、途端に落ち着かなくなる。藤田の足音が目の前に迫りきた。

「御堂部長が来ると聞いて朝イチで来たんですけど、なんだ、もう使われたあとかぁ」

 藤田は残念そうに呟いて、御堂の内腿をなぞった。そこは佐伯が何か書き込んだところで、薄い皮膚をつうとなぞられる感覚にぞわりと鳥肌が立つ。

「ぁ……」
「でも、もうヤられてるなら遠慮しなくていいですね。このあとミーティングが控えているので、さっさと済ませちゃいますね」
「藤田……なに、を………ひあっ!」

 ぐぷりと音がしてアナルプラグが抜き取られる。綻んだアヌスの粘膜が外気に触れてひくつくのもつかの間、腰を抱え込まれて剛直がふかぶかと突き入れられた。

「ぁ、ふじ、た……っ、んく、は、ぁ」
「何を、って決まっているじゃないですか。御堂部長はそのために来たんでしょう?」

 藤田が上から覆い被さるようにして御堂を貫いた。固い便座が背中と拘束された腕に当たり、身体が軋むように痛む。藤田は根元まで自身を埋め込むと、優しい声音で言った。

「その手、辛いですよね。いま外してあげますから」

 両手首の拘束を外される。その弾みでバランスを崩しそうになり、とっさに藤田の背中にしがみついた。藤田が吐息で笑う。

「しっかり捕まっていてくださいね」

 そう言って藤田は腰を大きく動かし出した。粘膜を容赦なく拡げられ抉られる苦しさに御堂は喘ぐ。

「ひっ、あ…深い……っ、藤田…っ、もっと、ゆっくり……っ」
「だから、時間がないんですってば」

 激しく腰を打ち付けられて懇願の声をあげるも、藤田は御堂を一顧だにしない。自分が可愛がっていた部下に欲望のままに犯される。たくましい亀頭で擦られつつ激しく揺さぶられて、御堂はどうにか藤田の動きを抑えようと両足を藤田の腰に巻き付けた。それはまさしく男を迎え入れる態勢で、藤田はますます淫らな音を立てながら御堂の中をかき混ぜた。
 藤田は猛々しく突き上げながら御堂に言う。

「御堂部長、こんないやらしいピアス付けて。毎日男に身体を売っているって本当ですか」
「違……っ、くあっ、あ」

 咄嗟に否定するが、藤田の言うとおりだった。佐伯に命じられれば御堂は男たちに身体を与えた。クラブRの客は見知らぬ男たちばかりだったが、かつて自分が仕事をしていた場所で部下に抱かれるのは今までにないほどの恥辱だった。
 それでも、藤田に深々と抉られて急激に性感が昂ぶっていく。藤田に腰を打ちつけられるたび、意識が蕩けて艶めいた声を上げてしまう。

「ぁ、あ、……っ、あああ」
「御堂部長の中、めっちゃ気持ちいい……」

 佐伯の精液で潤った粘膜は物欲しげに藤田のペニスに絡みついた。藤田は貪るようにして御堂を追い詰める。御堂は藤田にしがみつきながら昇り詰めた。アイマスクの裏に火花が散る。

「んあ、は……、あっ、イ、イク……っ!」

 ペニスは戒められたままで、それでも後ろを強く抉られて、御堂はドライで達してしまう。射精を伴わない絶頂は長く続き、腰をカクカクと長く震わせた。
 続けざまにびゅるっと衝撃が伝わるほどの大量の精液が藤田のペニスから吐き出される。重ったるくなった下腹はじんじんと疼いていたが、藤田は名残惜しそうに腰を引いた。どろりと伝い落ちる精液を塞ぐようにしてアナルプラグを嵌められて、ふたたび後ろ手に手錠をかけられる。藤田は御堂の内腿にマジックで一本線を書き足した。

「ぁ……」
「それじゃあ、今日一日、性欲処理担当部長として頑張ってくださいね」

 その言葉を残して藤田は出ていった。御堂はようやく自分がなぜここにいるのか理解した。


 その次に来たのは二人の男だった。アイマスクのせいで何も視えなかったが、男たちは御堂を知っているようで、御堂を見て嬉しそうな声を上げる。首にかけられた社員証が引っ張られた。

「本当に御堂部長だ」
「どこに行ったのかと思っていたら、性欲処理担当になっていたとはな」
「こんなエロい格好をして、まさしく肉便器じゃないか。どれだけ男好きなんだ?」
「く……っ」

 男たちは好き勝手に御堂を嘲笑すると、「じゃあ、早速相手をしてもらおうか」と御堂を立たせた。手錠を外すと御堂の頭を掴んでお辞儀をさせるように頭を下げさせて言った。

「じゃあ、御堂部長、舐めてください」

 口元にペニスを押し当てられる。御堂は一瞬ためらったものの唇を開いて男のペニスを咥えた。
 こうなったら、抵抗するよりも一刻も早く満足してもらった方が苦しみが早く終わることを御堂は学んでいた。クラブRで散々仕込まれたように、男の幹に舌を這わせて頬をすぼめ、先端を吸い上げる。頭を前後させて口の輪で男のものを扱けば、あっという間に口内のペニスは張り詰めて、御堂の巧みな口淫に男が唸る。

「すっげぇ、気持ちいい……」
「ん、ふ……」
「さすが、御堂部長。上手いな…」

 熱心にしゃぶっていると男は熱っぽく息を吐いた。御堂の頭を掴む手に力が籠められ、男が感じている快楽が伝わってくる。

「それなら、俺はこっちを使わせてもらいますね」
「んん――っ!」

 背後の男は御堂の腰を掴んで突き出させると、アナルプラグを抜いた。そして怒張したペニスを突き立てる。ズブズブと根元まで御堂のアヌスに埋め込むと、我慢できないといったように忙しない抽送を繰り返す。

「柔らかいけどきゅうきゅう絡みついてきて気持ちいいぜ」
「ふ……っ、は、んんっ」
「御堂部長、口がお留守になってますよ」

 後ろを犯される衝撃に気を取られていると、御堂の口を犯していた男が御堂の頭を鷲掴みにして自ら激しく腰を振りだした。御堂の口内を深く責め犯す。

「ぐ、ぁ……っ、あああ、はあっ」

 喉の奥を抉られる苦痛に悶えるが、それでも従順に喉を必死に拓いて応えてしまう。たっぷりと唾液をまぶして舌を絡め、頬をすぼめて締めつける。口蓋や喉の粘膜で感じやすいところを的確に刺激しながらペニスから溢れる大量の先走りを啜ると、男は感じ入ったように吐息を漏らした。

「さすが、若くしてエリートになっただけあるな。口と尻を使って上に取り入ったのか?」
「ん……っ、ふ、んんっ」

 そんなことはしていないと否定しようにも、口は男のペニスにめいっぱい塞がれて、背後からは激しく打ちつけられ続ける。
 息を合わせたように二人の男に前後から犯されて、揺さぶられた。
 ドスドスと背後から強烈に突き入れられるたびに身体が前に押し出され、より深くペニスを口にくわえ込まされてしまう。男の長いペニスが根元までがっちりと唇に沈み、食道まで犯されるディープスロートに悶え打った。

「喉の締まりすげぇ……」

 男のモノが一際大きくなり口内で脈打つ。

「ほら、零さず飲めよ、御堂部長」

 喉奥まで突き込まれて大量の精液を注ぎ込まれる。逃げられないように頭をがっちりと押さえられて、喉を塞がれて呼吸を妨げられる苦しさに顔を真っ赤にしながら、粘ついた精液を必死に飲み込んでいった。

「俺もイく……っ」

 それと前後してアヌスを犯していた社員が御堂の深いところに精を放つ。御堂を思うがままに蹂躙して満足したペニスが引き抜かれた。

「いっぱい種付けしてもらえるといいな」
「頑張ってくださいよ、御堂部長」

 男は便座に座らせた御堂を元のように拘束すると、内腿にマジックで二本、線を引いた。笑い合いながら個室を出て行く。
 MGN社員たちの性欲処理係。それが今日一日の御堂の仕事なのだ。



 次に入ってきた男は、御堂を見るなり「ほう……」と感心したような声を漏らした。

「早速活躍しているようだな、御堂君」

 そのしゃべり方、その声に御堂は視界を塞がれていてもすぐさま反応する。

「まさか………大隈専務」
「嬉しいね。ちゃんと覚えてくれていたとは」

 ざあっと血の気が引いた。目の前にいるのは大隈で間違いないようだ。大隈は御堂を引き立ててくれた恩人で、御堂が若くして部長になったのも大隈が後ろ盾となって推してくれたことが大きい。そんな相手に痴態を晒している自分に気づき、一気に理性が引き戻される。

「専務、これは……っ」

 慌てて弁明しようとするが、大隈は鷹揚な態度で言った。

「御堂君、次は私の相手を頼めるかね」
「はい……?」

 一瞬、何を言われているのか分からず、だが、大隈の言葉を理解すると同時に顔が紅潮した。他の社員にそうしたように、いまから大隈に奉仕させられるのだ。
 ぞわりと背筋に冷たいものが走った。



「いいぞ、そのまま腰を落とすんだ」
「はい……っ、は、あ……っ!」

 便座に座った大隈を跨ぐようにして、御堂はゆっくりと腰を落としていった。
 アナルプラグで綻んだアヌスに圧がかかり、じわじわと大隈の屹立を呑み込んでいく。張り出した亀頭をどうにか咥え込むと、男たちの精液でぬかるんだ粘膜がぐちゅりと卑猥な音を立てた。MGN社で確固たる地位を持つ男は白髪交じりの髪であっても、ペニスは硬く張り詰めていて長さもあった。どうにか全部収めて大隈の太腿に尻肉が密着したときには、身体の中心に杭を打ち込まれていくような苦しさに御堂は酸欠の魚のように口を大きく開けて喘いでいた。

「御堂君、舌を出せ」

 そう言われておずおずと舌を出すと大隈に吸い上げられた。舌を絡められ、唾液をくちゅくちゅと混ぜ合わされて、口の中に注がれる。それをコクリと喉を鳴らして呑み込めば、大隈は満足げに笑った。口を離して言う。

「では、動いてもらおうか」

 大隈は自ら動こうとせずに腰を掛けたままだ。御堂は覚悟を決めると、大隈の怒張を受け容れた腰を振り立てて、大隈のペニスを自ら扱き立てた。腰を上下させるたびに、赤く熟れた粘膜が捲れ上がっては剛直を呑みこんでいく。そんないやらしい姿を晒す結合部に大隈の熱を帯びた視線を感じた。アイマスクをして視界を閉ざされている方が相手の眼差しや息遣いを生々しく体感する。御堂の痴態は大隈にあますことなく鑑賞されているのだ。大隈が満足げな吐息を吐いた。

「君は何をやらせても上手くこなすな。だが、以前の姿より、こうして男に抱かれる方が君に相応しい。適材適所だ」
「ん、あ、あ……」

 大隈の膨らんだ亀頭が御堂の前立腺を擦る。それがたまらない疼きになって、御堂は羞恥も忘れてリズミカルに腰を動かし始めた。

「頑張っている君に褒美をやろう」

 そう言って大隈は御堂のペニスを貫くブジーをピンと爪弾いた。腫れて敏感になっている前立腺、そこを串刺しにするブジーをいじられて、灼熱のような快楽が御堂を焦がす。

「ひぃっ」

 電撃を打たれたかのような衝撃に身体を強張らせる御堂に、大隈は淫蕩に笑いながらブジーを前後に動かし出す。くちゅくちゅと蜜をかき回され、前立腺を内側からノックされて御堂の意識が粉々になる。

「なんだ、こうされるのが好きなのか。だが、いかんな。腰が止まって居るぞ」
「くぁっ、はあっ! ひぃぃぃっ!」

 大隈が御堂の尻を手で打擲した。ひりつく痛みに我に返り、ふたたび足に力を籠(こ)めて、腰を上下させる。大隈のペニスを御堂の粘膜で締め付け擦りあげ、絶頂へと導いていく。
 大隈はその間も、御堂の乳首のピアスをねじったり、ブジーで責め立てたりして、御堂が少しでも動きを鈍らせたら尻を叩いて叱咤する。

「専務、や……っ、はあっ、あ、ああ」

 ペニスや乳首の刺激を与えられるたびに、貫かれたアヌスが蠕(ぜん)動(どう)して大隈に絡みついた。大隈にいたぶられながら犯されて、被虐の官能が燃え上がる。御堂は上(うわ)擦(ず)った悲鳴を漏らしながらも腰を振り立て続けていると大隈が御堂の腰を掴んでがっちりと固定した。そうして、下から強く打ち込んでくる。大隈のペニスが粘膜を穿ちながら恐ろしい深さまで達する。

「くぁ、あ、うああっ」

 内臓を押し上げられる苦しさに背筋がたわんだ。大隈はふかぶかと御堂にペニスを埋め込むと迸る勢いで精を放った。アヌスから脳天まで貫かれたような衝撃に御堂は裸身を跳ねさせた。

「……やはり、君を性欲処理係として派遣してもらって正解だったよ」

 ぜいぜいと呼吸を乱す御堂を元のように便座に拘束し、大隈は愉悦に満ちた声で言った。

「そうだ、忘れるところだった」
「――――ぅ」
「では、御堂君、頑張ってくれたまえ」

 大隈は御堂の内腿に線を書き込むと、悠然と去っていった。



 大隈が去ったあとも次から次に新しい男がやってきた。
 個室の中で御堂を好き勝手な体位で犯し、いたぶり、奉仕させ、たっぷりの精液を吐き出していく。中に出したあとは零さないようにアナルプラグで栓をされるので、精液が粘膜に染みこんでいくような体感に肌が粟立った。どれくらいの時間が経ったのだろうか。意識が朦(もう)朧(ろう)としてきたところで、ふたたびドアが開いた。ずかずかと足音が聞こえ、声が響く。

「なんだ、俺で十七番目か。さすが御堂部長、人気だな」

 入ってきた男は御堂の内腿に書かれた正の字を確認して、つまらなそうに言った。

「もうすでにガバガバじゃないの? 御堂部長、大丈夫? 起きてる?」
「ぅ……」

 頬を軽くはたかれて呻く声を上げると、男は嬉しそうに喉で笑った。

「俺も使わせてもらいますよ」

 そう言ってアヌスプラグをぬぷっと引き抜かれる。途端に中に溜まっていた精液がごぷりと溢れ落ちてきた。

「いっぱい出てきたな。十七人分のザーメンか?」
「あ、も……、や…あああっ」

 男は笑いながら御堂の腰を抱えるとすぐさまペニスを埋め込んできた。
 御堂の中に放たれた大量の精液はペニスを抜き差しされるたびに結合部から溢れかえる。ぐちゅぐちゅと恥ずかしい水音を立てながら男は交わりを深くした。

「う……ん、くあっ」
「すごいヌルヌルだ」

 男はたくましく腰を遣い始める。何人もの相手をさせられて身体は重くなっているのに、ずうん、と深いところを突かれれば、たちまち痺れるような快楽が込み上げる。男の身体の下で快楽に悶えていると、背後から扉が開く音がした。どうやらもう一人やってきたようだ。御堂は、新たな男の登場に身を固くする。入ってきた男が言った。

「なんだ、使用中か。まだかかりそう?」
「いま、遣い始めたばかりだけど、それならお前も一緒にヤるか?」
「な……」

 自分を犯す男の言葉に慄然とする。
 男は腰を浮かすようにして御堂と位置を変え、自ら便座に座ると、もう一人の男に御堂との結合部を曝け出した。

「ふーん。二輪差しって初めてだけど気持ちいいのか?」
「御堂部長の前で失礼だぞ。部長なら気持ちよくしてくれるに決まっているだろう」
「そうだな。失礼しました、御堂部長。俺もお邪魔します!」

 笑い含みの声と共に御堂の背後で男がカチャカチャとベルトを外す音がする。
 まさか、本気で挿入する気だろうか。

「む、無理だ……っ」

 御堂は怯えた表情を見せて逃れようと身体をねじるが、ペニスで穿たれた身体はしっかり固定され、逆に陵辱者たちを煽るだけの結果だった。

「無理だなんて、部長らしくもない。失敗を怖れるな、と言っていたのは御堂部長でしょう?」
「――――っ」

 確かにMGN時代にそう言った覚えはあった。ここにいる男は、御堂の言葉を聞く立場にあった誰かなのだろうか。だが、記憶をたぐり寄せる前に、窮屈な場所に壮絶な圧がかかった。真っ二つに引き裂かれるような苛烈な痛みに悲鳴を上げた。

「あ、あああっ、裂ける……っ!」

 一人を受け容れるだけでも限界のアヌスはこれ以上なく大きく開ききる。ぐりぐりとねじ込まれて、赤い粘膜を剥き出しにしながら二人目の男を招き入れていく。
 あまりの苦しさに涙が零れた。涙を吸ったアイマスクが重たく湿る。だが、男たちは御堂の哀願を聞き入れることなく、無情に貫いていく。

「やっぱりきついな」
「そう? 俺は気持ちいいけど」

 中にあふれかえっている大量の精液のぬめりを借りて二人のペニスが御堂の奥の奥まで押し込まれる。性交のための器官でないところを二本のペニスで埋め尽くされて蹂躙されて、二人の男に挟まれながら御堂は悶絶した。

「やめ……、動かないで…くれ……っ! 壊れる……っ、ひ、あ、ああああっ!?」

 あまりにも激烈な感覚に身体がずり上がろうとするが、二人の男にしっかりと押さえ込まれる。男たちは御堂にめり込ませたペニスを代わる代わる動かしながら、御堂の肉の締め付けを味わう。

「ほら、御堂部長、そんなに叫ぶとみんなが見に来ちゃいますよ?」
「ヒ……っ、や、あ、ダメ……っ、くるし…、ひぁ、あああ――」
「仕方ないなあ」

 そう言って男は御堂の顎を掴むと唇を重ねてきた。悲鳴をキスで塞がれる。男はタバコを吸っているのだろう。苦みのある唾液に、佐伯の顔が脳裏に浮かんだ。凍えた眼差しが御堂を冷たく睥睨する。それを想像した途端、下腹の奥がきゅうと疼いた。
 すると背後から御堂を犯していた男が動きを止めて言う。

「ん? 締まったぞ。キスが好きなのか、御堂部長は」
「へえ、可愛いところあるんだなな。それにしても、部長の唇柔らかいな。次は俺のをしゃぶってくださいよ」

 そう言いながら、男は御堂とキスを繰り返す。口内まで貪られて呼吸もままならず息も絶え絶えで喘ぎ続ける御堂だったが、苦痛はいつしか反転し痺れるような快楽が御堂を炙りだしていた。クラブRで徹底的に植え付けられた被虐の悦楽だ。

「感じてるんだ、御堂部長。淫乱だなあ」

 男たちは笑い含みに言いながら、御堂の乳首のピアスをきつくねじったり、張り詰めたままのペニスを戯れに扱いたりする。

「やめ……っ、ひいっ、あ、ああああ」

 あまりの苦痛と快楽に涙が次々と溢れて、アイマスクを濡らしていった。ひと突きごとに身体から力が抜けて腰が落ち、さらに挿入を深めてしまう。

「ぐ、ぅ……ぁ、くるし……っ、は、あ」

 エリートの中のエリートであった自分を知っている社員に次々と犯され、手加減なく嬲られる。かつての御堂なら歯牙にもかけないような下の立場から、御堂を引き立ててくれた専務まで。男たちに嘲り、犯されて、嫌がる精神とは裏腹に身体は肉の悦びを求めてしまう。

「御堂部長ありがとうございました!」
「またよろしく!」

 中にたっぷりと粘液を吐き出して満足した男たちが御堂の内腿に線を書き込んで去ったあとも、男は途切れることなくやって来た。そしてまた男たちは自分たちの性欲を満足させることには熱心でも、御堂のペニスに射精を許すことはなく、御堂のペニスはずっとブジーで串刺しにされたままだ。
 心身ともに疲労困憊し何人に犯されたのかも分からなくなったころ、個室の扉が開いた。聞き覚えがある声がかけられる。

「御堂部長、お疲れさまです。藤田です」
「…………」

 どうやら、藤田のようだった。返事をする気力も体力も尽き果てて、ぐったりと便座の背もたれに寄りかかったままでいると、藤田の気配が近付いた。

「本当はアイマスク外しちゃいけない決まりなんですけど、もう最後だし良いですよね」
「最後……?」
「ええ、もう終業時間も過ぎましたよ。御堂部長、お疲れさまでした」

 最後という言葉に反応して、藤田の声がする方に顔を向けた。藤田の指が顔に触れ、アイマスクが外された。トイレの室内を照らす人工の照明が眩しくて、御堂は腫れぼったくなった瞼で瞬きを繰り返した。ようやく視野が焦点を結ぶと、藤田が御堂と視線を重ねてにこりと笑う。

「藤田……」
「すごい、二十二人ですか。さすがですね」

 藤田が御堂の内腿に視線を落とした。そこは男たちが御堂に注ぎ込むたびに書き込んだ正の字があった。
 かつてこの場所で高みを目指して働いていた自分が、社員の性欲処理の道具として扱われることになろうとは。その惨めさに涙が零れる。
 だが、藤田はその涙を別の意味に解釈した。

「御堂部長、泣かないでくださいよ。一回も出させてもらえなくて辛かったですよね」
「違……っ、や……ぁ………」

 藤田は優しい手つきでブジーが穿たれたままの御堂のペニスを愛撫する。ブジーのせいで萎えることも許されなかったペニスは藤田の手にすぐさま反応して痛いほどに張り詰めた。

「俺がイかせてあげましょうか?」

 労る声で訊かれて、思わずがくがくと頷いてしまう。藤田は御堂に向ける笑みを深めた。

「じゃあ、最後にもうひと働きしてくださいね」
「う……、ああっ」

 そう言って藤田は御堂のアナルプラグを引き抜いた。どろりと大量の粘液がこぼれ落ちるアヌスに藤田は指を入れて中を掻き出していく。

「ここもきれいにしてあげますよ」
「藤田……く、あ……」
「ドロドロですね。みんなたっぷり出したなあ。……これくらいで大丈夫かな」

 そう言って藤田は御堂を立たせた。便座に座った藤田を跨ぐ形で屹立を咥え込まされる。大隈のときとおなじ体面坐位だ。たっぷりと精液を吸わされた粘膜は拒むこともなく藤田を迎え入れる。

「ふぁ、……は、ぁ、あああっ」

 藤田は中の具合を確かめるように下から何度か突き上げると言った。

「ほら、御堂部長、可愛くおねだりしてくださいよ。俺は大好きな部長には優しくしますよ」
「やめ……く、ふ、ぁああ」

 浅く腰を動かされて前立腺をごりっと抉られた。散々犯されたのにもかかわらず、それだけでも疼くような愉悦に身体を震わせてしまう。

「藤田……、嫌だ、こんなの……よせ……」
「本当に嫌なんですか? 御堂部長」

 藤田の手が乳首のリングを摘まんで緩く揺さぶり、また、御堂のペニスを根元から軽く扱いたりする。甘やかな愛撫で官能を焦らされて、かろうじて残されていた理性が削り取られていった。とろ火で炙られているような快楽に堪えられなくなってくる。もう少しで極みに到達できるのに、もうひと押しの刺激が足りないのだ。

「ふ、じた…、ぁ、あ、もっと……っ」

 イヤイヤと首を振って、もっと決定的な刺激を与えてくれるように藤田に乞う。だが、藤田は御堂を焦らすばかりで御堂が切望するものを与えてくれない。

「ダメですよ、御堂部長。そんな風に甘えても。ちゃんと言葉にしておねだりしないと」
「うぅ……」

 かつての部下だった藤田に抱かれてよいようにされている自分が悔しくて、惨めで、涙が溢れた。御堂は佐伯によって徹底的に貶められて、性奴隷に落ちた。佐伯に抱かれることは心から受け容れて服従を誓っているというのに、どうして他の男にまで辱められなくてはならないのか。
 藤田が御堂の心を見透かすかのような眼差しで言う。

「それとも、部下だった俺にお願いするのはプライドが許しませんか?」
「く……」

 そう、そうなのだ。御堂の残された矜持が震えた。自分が服従するのは佐伯だけだという矜持だ。佐伯の命令でクラブRの客に供されても、それは御堂の望むことではなかった。だが、そんな御堂の傲慢さを佐伯は見抜いていた。だからこの場に連れてこられたのだろう。性欲を処理する道具としての自分の立場を分からせるために。
 ひとたび佐伯に命じられれば、御堂はどんな相手に対しても、もっと浅ましく、もっといやらしく、媚びて服従しなくてはならいのだ。
 佐伯はどこまで自分を堕とせば気が済むのか。だが、御堂が落ちるところまで落ちねば佐伯は満足しないのだ。新しい涙が一粒こぼれ落ちる。

「…………せて……」
「なんですか?」

 小さく零れた言葉を藤田が聞きとがめる。

「藤田、イかせてくれ……っ。いや、イかせてください…っ、お願いだから……っ」
「それならどうして欲しいのか、分かりやすく教えてくださいよ」

 藤田が意地悪く聞き返す。だが、一度あふれ出した言葉は止められない。焦(こ)がれる欲求をそのまま口にした。

「藤田のが欲しいっ、私をもっと深く、強く抉ってくれ……っ」

 言った瞬間に、ゾクゾクとした痺れが背筋を走った。自分の部下に犯してくれと屈服する恥辱と絶頂への切迫感が倒錯し、被虐的な陶酔に包まれる。

「私を、めちゃくちゃに犯して……っ。藤田のでいっぱいにしてくれ…っ、中にたっぷり出して欲しい……っ」
「よく言えました」

 動きを止めていた藤田が吐息で笑う。そして、激しく腰を打ちつけだした。焦がれていた刺激を思う存分、与えられて御堂は悶える。

「こんな風に酷くされると感じちゃうんでしょ?」
「ひ、あ、気持ち、良いです……! もっと乳首も嬲って…っ、もっ」
「部長のおちんちんも酷くして欲しい?」
「お願いします、どうか…っ、出したい……っ」

 ガクガクと首を振って頷いた。藤田は御堂の乳首のピアスを千切れそうなくらい捻り、そしてまた、ぐちゅぐちゅとブジーを出し入れする。尿道を犯される鋭い痛みに御堂は涙を次から次に溢れさせた。

「は、ああっ、ひぃっ! ふじ、た……っ、やめ、あ、もっと」

 御堂ははしたない嬌声を上げて乱れまくる。貪欲に内壁が蠕動し、藤田のペニスに絡みついてさらなる責めをおねだりした。

「イく……、あ、イっちゃう、ひ、ああ――――っ」

 喉を反らして上げた声は藤田の口に塞がれる。口内までも舌で犯されて、繋がれるところはすべて繋がれる。吐息まで貪られて喘ぎながら激しく射精した。藤田によって浅ましい絶頂を極めさせられる。
 同時に藤田の熱を奥深いところで受け止めながら、半ば無意識で御堂は呟いていた。

「佐伯……」

 人としての尊厳はとうに破壊され、性奴隷として徹底的に貶められてもなお、佐伯への想いがそこにあった。畏怖とも思慕ともつかぬ名前の付けられぬ感情。どこまで堕ちたとしても、きっとこの想いを捨て去ることはできないのだろう。
 散逸する意識の中で御堂はもう一度、佐伯の名を呼んだ。


END
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