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eclipse 4

 MGN社の執務室。終業時間もとうに過ぎたところで執務室のドアがノックされた。御堂が「ああ」と返事をすると、ドアが開き、藤田が顔を出した。

 

「御堂部長、失礼します。頼まれていた資料、どうにか今日中に準備できました」

 

 書類を抱えた藤田はまっすぐに御堂のデスクへ向かおうとしたが、同じく執務室内に控えていた佐伯が藤田の前に立ちはだかる。

 

「藤田、それは俺が受け取ろう」

「え、ですが、これは御堂部長から至急でお願いされた資料ですが……」

 

 藤田は戸惑った視線を御堂に向ける。御堂は眉間を曇らせつつ、藤田に告げた。

 

「藤田、佐伯に渡してくれ」

「承知しました。よろしくお願いします」

 

 藤田は佐伯に書類一式を渡すと一礼して執務室を出た。佐伯は藤田が出た後のドアの鍵を閉めると、執務室のソファにどさりと腰を下ろす。長い足を組みながら、書類の中身を一枚一枚確認し始めた。

 

「新製品の開発に必要な資料だ。貴様が興味を持つようなものではない」

「それは俺が判断する」

 

 至急で必要な資料と分かっているだろうに、佐伯は御堂の苛立ちを煽るかのように、じれったい速度で中身を確認すると、ようやく顔を上げた。ソファから立ち上がり、資料を御堂へと手渡す。それを奪い取るようにして佐伯に吐き捨てた。

 

「嫌がらせはもう十分だろう。ここに貴様の求めているものなどない」

 

 書類だけでなくメールも電話も、すべてを佐伯に監視されている。プライベートのみならず、職場までも堂々と踏み荒らして御堂の邪魔をするのだ。それも御堂専属の補佐という名目で。中世から続くバチカンの隠然たる影響力は、この極東の日本にあってもいまだ無視できないほどであることに歯がみする。

 

「嫌がらせ? 人聞きの悪い」

 

 佐伯は薄い笑みを浮かべながら御堂の耳元へと口を近づける。

 

「お前は自分の顔が見えていないのか? すぐにでも突っ込んでくれと言いたげな、発情した顔をさらしているぞ」

「――ッ!」

 

 ハッと自分の顔に触れた。指先に熱く火照っている頬が触れる。

 

「そんな顔を藤田に間近で見られたくないだろう? 気を遣ってやったのさ」

 

 佐伯が低い声で嗤う。

 

「誰のせいだ……!」

「素直にならないお前のせいだろう?」

「ふっ、ぁ、あ……」

 

 不意に、機械音とともに、身体の奥深くでローターが震えだした。佐伯がスイッチを入れたのだろう。喘ぐ声が漏れてしまい、慌てて手の甲で口を塞ぐ。

 今日は執務室に出勤するなり、佐伯にローターを後孔に含まされてアナルプラグで栓をされたのだ。そのコントローラーは佐伯の手の内にあり、気まぐれにスイッチを入れられては、御堂が悶える様を愉しんでいる。

 そして、佐伯が施した仕打ちはこれだけではなかった。ローターの刺激が響くほどに、御堂のペニスは痛苦しくなる。腫れ上がるペニスに金属の輪がいくつも食い込むからだ。

 御堂のペニスには貞操帯が付けられていた。金属の輪が幾重にも連なって筒状になった部分に陰茎が収まり、陰嚢と陰茎の根元には大きな輪が嵌められている。そして、外れないように、鍵できっちり戒められているのだ。御堂のペニスのサイズにぴったりと誂えられたかのような貞操帯は、先端部は解放されているので排尿に支障はないが、萎えた形で固定されるため、わずかにも勃起することができない。

 

「く、きつい……っ」

 

 貞操帯が膨張しようとするペニスを締め上げた。その苦痛に御堂の息が上がる。

 こんな卑劣な手段を使ってまで御堂を苛む佐伯を、呼吸を乱しながらも御堂は射殺さんばかりに睨み付ける。

 

「いくら魔力を封じていても、あんたの視線は殺気をびんびんに感じるな。怖い怖い」

 

 御堂の魔力は首に巻かれた首輪に封じられている上、佐伯の聖別されたレンズは御堂の魔眼を防いでいる。それでも御堂の魔眼の威力の片鱗は感じることができるのだろう。佐伯は冗談めかして肩を竦め、怖がってみせる。そして、ポケットの中のコントローラーをさらに操作した。途端に、ローターの振動が強くなる。

 

「はあっ、ぁ、あああっ」

 

 ローターによいところを抉られて、腰が跳ねる。視線が佐伯から外れ、がたりと椅子が音を立てた。

 

「俺にたてつくとどうなるか、未だに分からないのか?」

 

 佐伯がその気になれば、首輪から聖呪を放ち、打ち据えることもできる。首輪のせいで御堂は圧倒的に不利な立場にあるのだ。それでも、人間ごときに従うなど御堂の矜持が許さなかった。たとえ御堂が悪魔でなくても、こんな卑劣な人間に膝を付くなどあり得なかっただろう。

 だが、佐伯もまた名うての祓魔師だった。苦痛と快楽を巧みに使い分け、御堂を支配下に置こうとしてくる。そして御堂は佐伯に着々と矜持も魔力も削られていた。

 

「ぐ……、も…、止めてくれ……」

 

 貞操帯の中で張り詰めるペニスの苦しさに御堂は上体を屈めた。すると、ローターの振動がさらにダイレクトに響いてくる。

 あまりの苦しさに抗う気力も削がれて、呻く声で乞うとようやくローターの振動が弱くなった。

 詰めていた息を吐き、どうにか勃起を治めようと深く呼吸を繰り返し、疼く熱を押しとどめようとした。そんな御堂に佐伯が冷たい声で命じる。

 

「御堂、ズボンを下ろせ」

「っ……」

 

 御堂はびくりと身体を強張らせ、のろのろと立ち上がる。更なる屈辱的な目に遭わされることは分かっているのに、もしかしたらローターか貞操帯、そのどちらかを取ってくれるのではないかと一縷の望みを抱いてしまう。

 ベルトを外し、ファスナーを降ろす。そしてズボンを膝まで下ろした。すると、腫れ上がったペニスに淫らに絡みつく拘束具が露わになる。拘束具がかさばるからと下着は剥ぎ取られていたのだ。

 佐伯は御堂の痛々しいペニスを目にすると、さらにひと言命じた。

 

「窓に両手をつけ」

「な……っ」

 

 御堂は色を失った。高層階にある執務室ははめ殺しの窓が壁一面を覆っている。外はすでに暗くなっており、いくら室内が明るくても窓から中を覗かれることはないだろう。それでも、下半身を丸出しにした恥ずかしい姿を晒すような真似はしたくない。

 逡巡に動けないでいると、佐伯は低い声で威圧する。

 

「早くしろ。それともきついお仕置きを受けたいのか?」

「ぅ……」

 

 唇を血が出るほどに噛みしめて、御堂は窓に両手をついた。そもそも御堂に選択肢はないのだ。躊躇いはそれだけ苦しむ時間を長引かせるだけだ。

 背後に立った佐伯の手が御堂の尻肉を掴み、狭間のアナルプラグに指がかかる。かちゃり、と音がしてアナルプラグのロックが外される。

 

「っ、……ぁ」

 

 くちゅり、と濡れた音を立ててプラグが引き抜かれた。一日中プラグで拡張されていたアヌスはしどけなく綻び、ひんやりとした外気に触れた粘膜が物欲しげにヒクついてしまう。

 佐伯が喉で低く嗤いながら、御堂のアヌスに指を含ませた。ゆっくりと時間をかけながら、鈍く振動し続けるローターを引き抜く。

 

「ふ、ぅ……っ」

 

 忌まわしい淫具から解放されたことに詰めていた息を吐いたところで、佐伯の硬く張り詰めたペニスが御堂のアヌスに宛がわれた。

 

「っ、ぁ……あ、あ……」

 

 容赦ない圧力で押し込まれるペニスに、御堂は零れそうになる悲鳴を必死に呑み込んだ。だが、長時間、ローターとアナルプラグでいたぶられた媚肉は佐伯の侵入を受け容れる。ペニスはみるみると根元まで呑み込まれていった。

 

「ぁ……、は、あ……っ」

 

 身体を貫く圧倒的な質量に目を剥くと同時に、苦痛を感じながらも佐伯のペニスをいとも容易く咥え込んでしまった自分に慄く。男の身体は男の性器を受け容れるようにはできていない。それなのに、自分の身体はどうしてしまったのか。

 佐伯が腰を遣いだした。柘榴色の熟れた粘膜が捲れ返り、ぐちゅりと粘液と空気が混じり合った淫猥な音を立てる。張り出したカリが抜け出る寸前に、佐伯は腰をぐっと突き入れて、今度は根元まで深く咥えさせられる。

 佐伯が満足げな口調で言う。

 

「すっかり馴染んだな、俺のモノに」

「ひっ、ぁ……っ、く、ぅ……」

 

 抜かれるときは内臓ごと引き出されそうな喪失感に襲われ、突き入れられるときは身体の真ん中を貫かれるような圧迫感に襲われる。同時に、佐伯のペニスからは聖なる気が滲みだしてきて、御堂の身体を内側から炙った。

 

「ぁ、……も…よせ……っ、くるし……」

 

 佐伯が抜き差しをするたびに粘膜に佐伯の形と硬さを覚え込まされてしまう。抗うことも出来ずに、ただひたすらに犯される。その一方で淫らな熱に昂ぶった御堂のペニスは、金属の拘束具に勃起を阻まれて、締め上げられるような痛みをもたらした。

 腰を打ちつけてくる衝撃に耐えるように、御堂はガラス窓に爪を立てた。明るい室内を映す窓は御堂の顔を鏡の様に映し出す。そこに映った自分の顔は赤く上気し、恥辱と快楽に塗れている。そんな自分の顔を目にしてゾッとする。

 真に恐ろしいのは、この屈辱と苦痛を与えられるだけの行為に快楽を感じ始めてしまっていることだ。この短期間で御堂の身体は着実に作り替えられている。オスの生殖器を受け容れて悦ぶメスのように。そんな自分を認めたくなくて、御堂は声を上げる。

 

「やめろ……っ、さえ…き……っ」

「本当はこうして痛めつけられたいのだろう? マゾの悪魔め」

「違う…っ」

 

 呻きながら首を振って拒絶する。だが、佐伯は御堂をいたぶる動きを止めようとしない。

 炙られ続けた柔襞は煮崩れるほど熱くなり、下半身が崩れ落ちてしまいそうになる。それでも立っていられるのは佐伯に穿たれているからだ。

 グッ、グッ、と突き上げられるたびに、身体の奥から疼く感覚が込み上げてくる。それをもっと味わいたくて、佐伯のリズムに合わせて、御堂は無意識に腰を蠢かせた。だが、同時に佐伯の聖気に身体の奥深くを灼かれ、また、ペニスは金属の輪が幾重にも深く食い込み、抉られるような痛みをもたらした。それなのに自分の浅ましい動きを止めることができない。

 苦痛という薄皮を剥くとそこにみずみずしい悦楽の果実が現れるかのように、痛みはいつしか身を焦がすような官能にすり替わる。そして肉の悦びに溺れていってしまう。

 

「分かるか、御堂?」

 

 佐伯が上体を屈め、御堂の首筋に熱い吐息を吹きかける。その感触さえも鋭く感じ取ってしまい、御堂はぶるりと身を震わせた。佐伯が笑い含みに言う。

 

「俺に犯されれば犯されるほど、お前の中の魔力が失われる。魔力が尽きればお前はひ弱な人間以下の存在だ。そうなる前に、俺に服従するか?」

「誰が貴様なんかに……っ」

 

 気力を振り絞り、佐伯に吐き捨てる。佐伯は吐息だけで嗤い、律動を激しくした。突き上げられる衝撃に身体が浮き上がりそうになる。熟れきった粘膜は細かく痙攣しながら、佐伯のペニスを食い締め、奥へ奥へと誘い込むように収斂する。

 

「お前の身体はこんなにも俺に従順だがな」

「っ、く……ひ、ああっ」

 

 猛々しく犯されて、快楽と苦痛が境目を無くす。勃起を戒められたペニスは先端から透明な粘液を涙のように流し続けた。

 苦しい、辛い、気持ちが良い。

 頭の中が白み、何も考えられなくなってくる。

 

「ぁ、あ――……っ」

 

 限界まで膨らんだ苦しみと悦楽に御堂は悲鳴を上げた。だが、大きく開いた口を佐伯の手が塞いだ。くぐもった悲鳴が口の中で反響する。

 克哉の腰が強く押し付けられると同時に、御堂の奥深くまで食い込んだ佐伯のペニスがぐっと体積を増した。脈動がペニスを震わせ、欲情が一気に放たれる。

 

「――――っ!!」

 

 たっぷりと注がれる精液に御堂は目を剥いた。聖なる気を濃く乗せた飛沫は御堂の身体の奥底を焼き尽くしていくかのようだ。その瞬間、御堂の快楽も天辺まで駆け上った。だが、勃起ができないペニスは凝った快楽を解放することもできず、壊れてしまったかのように粘液を滴らせ続ける。

 達することのできなかった欲情が御堂を煮えたぎる泥沼に引きずり込む。呼吸がまともにできなくなって酸欠に喘ぎながら悶絶する。

 満足した佐伯がようやくつながりを解くと、御堂のアヌスに手早くアナルプラグを嵌めた。佐伯の放ったモノが流れ出てこないように中に留めて、御堂をいたぶり続けようとする気なのだ。

 佐伯が手を離すと、支えを失った御堂の身体がずるずると崩れ落ちた。床に倒れ込む寸前で、克哉に腕を掴まれて、椅子へと座らせられる。

 

「イけなくて辛かっただろう?」

 

 優しげな声音で、耳元で囁かれる。すすり泣くようにして御堂は頷いた。ペニスは拘束具の中で痛々しく腫れ上がり、うっ血している。

 

「じゃあ、あんたの家でたっぷりイかせてあげますよ」

 

 佐伯の声は酷く蠱惑的に響いた。

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