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eclipse 5

 執務室でひどい陵辱を受けて意識朦朧としている御堂に、服を無理やり着させたのは佐伯だった。

 佐伯は御堂のデスクの上のパソコンをシャットダウンし、勝手に帰宅の準備を進める。その姿を椅子に座った状態で呆然と見詰めていると、腕を掴まれて立たされた。そのまま執務室から連れ出される。

 とてもまともに歩ける状態ではなく、まだ仕事も残っていたが、克哉は御堂を引きずるようにして退社する。途中、はち合わせした社員に声をかけられたような気がするが、うろ覚えだ。佐伯が上手くあしらったのだろう。

 MGN社のビルを出て、タクシーへと乗せられた。御堂はタクシーの後部座席の奥へと押し込まれて、隣に佐伯が座る。御堂が口を開くよりも前に、佐伯は御堂のマンションの場所を運転手に指示をした。

 

「ぅ……」

 

 タクシーが発車するそんな僅かな振動さえも、今の御堂にはつらい。アナルプラグを嵌められたアヌスにはたっぷりと佐伯の精液が注がれて、その聖なる気が御堂を内側から炙り続けている。それだけではない。貞操帯を付けられて勃起さえも許されなかった御堂のペニスは、淫らな熱を宿したままじくじくと透明な蜜を溢れさせている。

 

「御堂部長、顔が赤いですよ。熱があるんじゃないですか」

 

 佐伯は素知らぬ素振りで御堂に話しかける。白々しい言葉を吐く顔に怒りが込み上げるが、佐伯が伸ばした手が御堂の太腿の上に置かれるだけでびくびくと身体が震えて、それどころではなくなってしまう。

 佐伯はズボンの上から御堂の太腿を擦(さす)り始めた。その指が御堂の股間へと辿り着く。御堂のペニスを拘束する金属の輪の連なりを上からなぞるように触れられると、直接佐伯の指に愛撫されているかのような感覚で、下腹にさらなる熱がなだれ込んだ。

 

「は……っ、ぁ、あ…っ」

 

 張り詰めようとするペニスが、金属の輪に食い締められる。その痛みに身体を強張らせながら呻く声を上げると、タクシーの運転手が心配そうな声を出した。

 

「お客さん、大丈夫ですか?」

「この人はちょっと具合が悪くてね。早く家に向かってくれるか」

 

 佐伯が御堂の代わりに答える。そして、御堂に向けて気遣わしげな声をかける。

 

「もう少しであなたの家に着きますよ」

「……うぅ」

 

 運転手はそれ以上何も言わずにアクセルを踏み込んだ。佐伯が御堂の耳元に口を寄せて囁く。

 

「こんなところでイくなよ、御堂? まあ、そんな粗相ができないようにこれを付けてやっているのだが」

「貴様……」

 

 嘲弄する口ぶりに佐伯を睨み付けるが、もう快楽と痛みは切羽詰まっている。そんな御堂に佐伯は笑みを深めながら、愛しいものに触れるような繊細なタッチで貞操帯の隙間を撫でてくる。その触れ方に限界まで昂ぶった欲情を煽られるだけ煽られる。

 御堂のマンションに到着しタクシーから降りたが、御堂は酔っ払ったようにまともに歩けなかった。そんな御堂を甲斐甲斐しい素振りで支えて部屋へと向かう佐伯は、見られたとしても泥酔した御堂を介抱している同僚にしか見えなかっただろう。

 御堂の部屋のドアは佐伯が御堂から奪ったスペアキーで解錠する。佐伯は我が物顔で部屋に上がり込み、御堂を引きずるようにして寝室に向かうとベッドへと御堂を突き飛ばした。

 

「くあっ」

 

 体勢を立て直す前にベッドに乗り上がってきた佐伯にズボンとアンダーを脱がされる。あっという間に両手を後ろ手に縛られて、脚を大きく拡げさせられた状態で両足首を金属のバーに固定された。

 金属の輪に食い込むほど痛々しく腫れ上がったペニスが、佐伯の視線に晒される。解放されない欲望は膿むようなじくじくとした熱を宿していた。

 

「約束どおりイかせてやるよ」

「――ぁっ」

 

 小さな鍵を取り出した佐伯は、御堂の貞操帯についている南京錠を外し、貞操帯をゆっくりと引き抜いた。そして、ようやく枷を解かれた御堂のペニスに指を絡めて、滑らかに上下に扱きだした。

 

「ひ、ぁ…、あ、ああっ」

 

 待ち望んでいた刺激を与えられて濡れた喘ぎが止まらなくなる。内腿を引き攣らせながら佐伯の手に自分のペニスを擦りつけるように腰をくねらせた。先走りはぐっしょりと佐伯の手と下腹を濡らし、いくばくもしないうちに鋭い快楽が御堂を突き抜けた。

 

「あ、うあっ、――ぁっ」

 

 御堂は背をしならせて精液を迸らせた。待ち焦がれていた絶頂は激しかった。全身を痙攣させてたっぷりと放つ。びゅくびゅくと吐き出した精液の勢いが衰えると、さらに佐伯は根元からペニスを扱いて最後の一滴まで搾り取っていく。腰が抜けそうなほど快楽に身を震わせていると佐伯が言った。

 

「これで準備はできたな」

 

 何を言っているのだろうと、御堂はぼんやりとした眼差しを向ける。佐伯は精液まみれになった御堂のペニスと自身の手を布で拭うと、自分の鞄から何かを取り出した。

 それは透明な細いチューブで、柔らかく、先端は先細りで医療器具のように見えた。佐伯はそれにジェルを塗す。

 

「まさか……」

 

 絶頂の余韻が引き、御堂は佐伯が何をしようとしているか悟って血の気が引いた。

 佐伯は絶頂後の硬さを残す御堂のペニスを掴むと、人差し指と中指で挟むようにして亀頭を固定した。そして裏筋の部分を親指で押し潰して御堂の尿道口を広げさせると、小さな穴にチューブの先を触れさせる。

 

「よせ、やめろ……っ」

「これ自体は聖具ではない。医療用のシリコン製の尿管カテーテルだから安心していいさ」

 

 敏感なところを嬲られる予感に御堂は必死に首を振った。だが、御堂の抗議に佐伯は嘲笑で応えると、つぷりとチューブの先端を沈めた。

 

「ひっ、ぁああああっ」

 

 敏感な神経を逆なでされる感覚に、怖気が走る。

 佐伯は中を確かめるように細かく前後させながらチューブを進めていった。精液で濡れた尿道は抵抗もなくチューブを受け容れていく。

 御堂は先日、佐伯に金属のブジーで尿道を犯されたのだ。その時使われたブジーは十字架を抱く聖具で、御堂の敏感な粘膜を問答無用に灼いていった。挙げ句、佐伯はそのブジーに聖なる気を流したのだ。その時のすさまじい苦痛を思い出して身体が強張り、抑えようにも足がガクガクと震えるが、佐伯の言うとおり、挿入されているチューブは純粋な医療用のようで、違和感はあるものの神経をむしり取られるような激しい痛みはない。

 それどころか、ペニスがむず痒いような疼きを孕み、狭い路(みち)で蠢くカテーテルに言い知れぬ感覚を抱いてしまう。いつの間にか御堂の身体の震えは収まり、ただただ荒い息を吐いて、ぞくぞくと込み上げてくる寒気のような快楽に感じ入る。

 

「は……ぁ、あ……っ」

「ここを犯される気持ちよさが分かってきたようだな」

「っ、――ああっ」

 

 一番苦しいところにカテーテルの先端を留め置いて、佐伯は小孔から出ている管を指で弾いた。振動がダイレクトに敏感な場所に伝わって、御堂は痛覚と紙一重の快楽に噎(むせ)ぶ。

 

「これからが本番だ」

 

 そう言って、佐伯はベッドから降りると何かを準備し始めた。ややあってベッドに戻ってきた佐伯の手には、円筒形の大きな透明な器具、シリンジが握られていた。

 

「それは……」

「シリンジだ。中に詰められているのは何か分かるか?」

 

 数百ccは入るであろう大きなシリンジ、そこに透明な液体が詰められている。水のように見えるが、目を凝らせばシリンジを覆う仄かな青い炎のゆらめきが見える。すなわち、中に満たされている液体は聖水だ。

 顔を強張らせた御堂に、佐伯は唇をいびつに歪める。

 

「そうだ、聖水だ。これをどうするか分かるか?」

「まさか……」

「さすが、察しが良いな」

「よせっ」

 

 不自由な身体を捩って逃げようとする御堂を佐伯はやすやすと抑えつける。そして御堂の尿道を犯すカテーテルの先端にそのシリンジを取り付けた。

 

「俺がこのシリンジを押し込めば、何が起きるか分かるだろう? だが、お前の態度次第では止めても良い」

 

 青ざめる御堂を前に佐伯は鋭い眼差しで御堂を見据えて言う。

 

「この人間との契約内容を言え」

「……契約なんて知らない」

「悪魔はどいつもこいつも嘘つきだな」

 

 そう言って佐伯はシリンジを僅かに押し込んだ。ちゅるっと冷たい液体の感触が下腹の奥に広がる。直後、ひんやりした感覚は灼けつくような熱へと変化して御堂の膀胱に広がった。

 

「くあっ、あ、熱い……っ、んあああっ、よせ…っ!」

 

 御堂は頭を仰け反らせ悲鳴を上げる。四肢が強張り、拘束具ががちゃがちゃと耳障りな音を立てた。

 ほんの少量の聖水が注入されただけなのに、その痛みは想像を絶する。

 

「聖水を直接体内に注入されるのは効くだろう?」

 

 ようやく衝撃から立ち直りぜえぜえと荒い息を繰り返す御堂に、佐伯は涼やかな顔を保ったまま、鋭い口調で尋問する。

 

「もう一度チャンスをやる。どんな契約を交わしたのか、契約の内容と時期を言え」

 

 佐伯は脅すように、御堂の目の前に聖水をたっぷりと詰めたシリンジをちらつかせる。もし御堂が答えを拒否すれば、その中に詰めた聖水を全部流し込む気なのだろう。

 

「御堂孝典、生まれてから今に至るまでのお前の個人情報はすべて手に入れている。だがお前は巧妙に人間社会に紛れ込んでいる。その目的はなんだ? この人間に何を要求され、何を与えた?」

「私は人間だ」

 

 御堂は掠れた声を絞り出す。佐伯はレンズ奥の双眸を眇めた。

 

「いいや、悪魔だ。そうでなければ、人間にとってはただの水である聖水が効力を及ぼすはずがない。……まだしらを切る気か」

 

 佐伯の言葉尻にかすかな焦燥が滲んでいた。佐伯は御堂を聖具でもって支配下におくことはできても、肝心な情報を何一つ入手できていないのだ。すなわち、御堂がここに存在する目的、もしくは、理由を。

 佐伯は言葉を続ける。

 

「お前が生まれてから32年間、お前の周囲では不審な死も事故もない。お前の人生はいたって順風満帆だが、今の地位に至るまでの経歴についても不審な点はなかった。MGN社の部長になることで何を企んでいる?」

 

 佐伯は凍えるような冷たい視線で御堂を見据える。不意に御堂はおかしさが込み上げて、乾いた声で笑いだした。

 

「は…、ははは……」

「何がおかしい?」

「なるほど、貴様は何の確証もなく、私が悪魔だから何か大それたことを計画しているに違いない、という思い込みだけで私を襲ったのか。それで私に四六時中つきまとってみたが、何の成果も得られなかった。だから、こうして拷問にかけてみることにしたのか。やっていることは中世から何の進歩もないのだな、祓魔師は」

「なんだと?」

 

 ポーカーフェイスだった佐伯の眉がぴくりと動く。どうやら痛いところを突かれたらしい。だが、佐伯はさらに冷え冷えとした声を出す。

 

「俺の質問に答えろ、御堂。お前たち悪魔が何の目的もなく人間社会に存在するはずがない。一体、何を計画している? どうして、この日本にいる?」

「それなら貴様はどうしてこんな下衆な祓魔師になった? 私が何か社会に反することをしたか? よほど貴様の方が下劣で反社会的なことをしているではないか! 祓魔師も随分と落ちたものだな」

 

 御堂は吐き捨てるように言い放つ。次の瞬間、佐伯はレンズの奥の眸をすっと細めた。その目に嗜虐の炎が揺らめく。

 

「俺にたてつくとどうなるか身をもって分からせてやる」

 

 佐伯は言葉と共にシリンジを大きく押し込んだ。

 

「ぐ、ぁあああああああああっ!!!」

 

 冷たい聖水が膀胱に注入されると同時に、灼熱の痛みが爆発した。

 御堂の口から留めようもない絶叫が迸る。あまりにも激烈な苦痛に呼吸の仕方を忘れる。

 御堂は悲鳴を上げて目を剥き、背筋を何度も仰け反らせた。全身がガクガクと震えて、拘束されてなければ苦悶にのたうち回っていただろう。

 

「まだ半分だぞ、御堂」

 

 低い笑い声とともに佐伯は尿道を犯すカテーテルをペニスの茎の半ばくらいまで引き抜くと、そこからさらにじわじわとシリンジを押し込みだした。

 

「やめ……っ、はあっ、あ、うあああっ」

 

 ゆっくりと注入された聖水が御堂の尿道を逆流していく。神経が剥き出しになった敏感な粘膜を、聖水が焼き尽くしながら身体の奥底へと流れ込んでいく。

 身体の内側をえぐり取られるような苦しみのあとには、ひりひりと焼けつくような疼きが残る。

 

「あ……、く……っ」

 

 どうにか苛烈な苦痛から立ち直るころを見計らって、佐伯はさらに新たな聖水を注入し、御堂は何度も地獄の苦しみに悶えうった。

 

「も……、入れるな……ぁっ、これ以上は…無理だ…っ!」

 

 御堂の額には脂汗が浮き上がり、髪を振り乱すたびに周囲に滴を散らしている。

 佐伯は最後までシリンジを押し込むと愉悦に満ちた口調で尋ねる。

 

「どうだ、魔力は潰(つい)えたか?」

 

 数百ccもの聖水を注入され、膀胱ははち切れんばかりにパンパンになっている。佐伯はカテーテルをもう一度奥まで押し込むと、シリンジから外し、聖水が溢れてこないようペニスからでているカテーテルをくるりと結んだ。

 御堂の拘束された手は、苦痛を堪えようと爪が手のひらに食い込み、血が出るほどに握りしめられている。

 身体の深いところに大量の聖水を注入され、全身にじわじわと毒液が沁み込んでくるかのようだ。だが、佐伯がもたらした責め苦はそれだけに留まらなかった。じりじりと灼かれるような熱のあとに妖しい感覚が生まれてきたのだ。苦痛と縒り合わさったそれは、御堂の下半身にどろどろと絡みつくような疼きとなり、呼吸は熱に浮かされたように浅く、速くなる。

 

「効いてきたか」

 

 佐伯の声がどこか遠くに聞こえる。

 

「お前のために、聖水に媚薬入りの香油も混ぜてやったが、やはりお前はどうしようもない淫乱だな。こんなことをされても感じるとはな」

「違……っ、ひ、んあっ、く……はっ」

 

 佐伯が嘲るように言い、カテーテルを摘まんでグリグリと回す。ペニスを犯される感覚に背筋を走り抜けるような電撃が走り、御堂に淫らな興奮をもたらした。

 

「何が違う。ここをこんなに勃起させて」

「やめ……、ああああぁぁぁんんっ」

 

 佐伯の指が御堂のペニスを根元から軽く擦りあげた。それだけで、すさまじい快楽が御堂を襲う。

 苦しくて苦しくて仕方ないのに、御堂の身体は露骨に発情していた。そんな自分の浅ましい反応を見せつけられて御堂は愕然とする。

 佐伯の度重なる責めで御堂の身体には苦痛と快楽の新しい回路ができてしまったかのようだ。

 

「次は後ろも犯してやろう」

 

 そう言って佐伯は御堂の足を固定していたバーを外すと、御堂の身体を返しベッドの上に伏せさせた。御堂は後ろ手に縛られた状態で肩を付き、尻を上げる体勢にさせられる。

 佐伯は御堂のアヌスに嵌められていたアヌスプラグを引き抜いた。執務室で陵辱されてしどけなく綻んだアヌスがひんやりとした外気を感じて、柘榴色の粘膜をヒクつかせてしまう。

 

「よほど期待していたのか」

「ちが……、やめ……っ、う、ぐああああ」

 

 佐伯は御堂の腰を掴むと、自身の反り返ったペニスをあてがい、ひと息に突き入れた。

 圧倒的な質量に内臓が歪められ、粘膜が抉られる。自分が決して届かない場所を犯されて、寒気と痛みが全身を巡った。それだけではない。膀胱を浸す聖水と同じ聖気が佐伯のペニスから伝わってきて、御堂をより苦しめるのだ。

 

「悔しいか、御堂? お前が軽蔑する下衆な祓魔師に犯されて」

「う……ぐ……」

 

 佐伯は激しく腰を打ちつけながら御堂に屈服を迫る。

 為す術もなく下賎な祓魔師に弄ばれ、御堂は悔しさに舌をかみ切りそうな勢いで歯がみする。それさえも、佐伯を喜ばせるだけだというのに。

 

「大分魔力は落ちてきているな」

 

 中の感触をしっかりと確かめながら、佐伯はこれ以上ないくらい深く突き入れてくる。御堂の粘膜は佐伯のペニスに絡みつき、その熱と形をしっかりと感じとってしまうことが悔しくてたまらない。

 限界を我慢させられている内臓に佐伯の突き上げがビンビンと響く。

 あまりの苦しみに御堂は喘ぐことしかできず、ビクッビクッと身体のあちこちで痙攣が起きる。

 佐伯は御堂を背後から抱え起こした。自分の膝の上に乗せて、背面坐位の体勢にすると下から突き上げてくる。

 

「んあ、あ……、よせ…、ふぁ、ああ…」

 

 佐伯に擦られる粘膜がどんどん熱を持っていく。

 

「酷くされるほど気持ちいいんだろう?」

 

 いたぶる声に応える余裕はない。

 御堂は激しく身体を揺さぶられ、真下から串刺しにされている。結合部に自重がかかり、一気に佐伯のペニスを咥え込まされる。それでも、ペニスはカテーテルに貫かれたまま、腹に付くほど硬く反り返り、カテーテルと尿道口の隙間からじくじくと蜜を溢れさせていた。

 前と後ろから炙られて、膀胱は破裂寸前だ。身体の内側から焼き尽くされるような感覚に御堂は首を振って苦悶の声を上げ続けるが、佐伯は御堂を責める手を決して緩めない。

 

「そろそろイかせてやろうか?」

「誰が……貴様なんかに……っ」

 

 反射的にそう言い返したが、御堂の限界はとうに超えていた。苦痛と快楽の境目はとっくに消え去り、悦楽の炎が御堂の思考まで痺れさせている。切羽詰まった尿意でさえも、今の御堂にはすべてを攫う快楽の波としか感じ取れない。

 佐伯は御堂の背中に手を回し、両手の拘束を外した。両手足とも自由になるが、アヌスを穿たれ聖水で責められて、御堂に逃げる気力はどこにもなかった。

 佐伯が優しげな声を出す。

 

「これを抜かないと苦しいだろう? 好きに抜いていいぞ」

 

 佐伯は痺れたように動かない御堂の手を掴んで、御堂のペニスを貫くカテーテルまで導いた。

 

「く……ぁっ」

 

 指先に聖水が満ちたカテーテルが触れる。シリコン越しとはいえ聖水に触れてぴりっとした電流を感じたが、それでもペニスから出ているチューブを掴んだ。それくらい、絶頂に焦がれていた。

 

「う……、は、ぁあっ」

 

 ほんの1ミリ引き抜くたびに敏感な器官を蹂躙されるような刺激に身体を震わせる。そして後孔を貫く佐伯をさらに食い締めてしまい、背後の佐伯が喉で嗤う。

 それでも御堂は、じれったいほどの速度でカテーテルを引っ張りながら、その先にある解放を焦がれる。それがどんな悲劇をもたらすのか分からないほど、御堂の思考はぐずぐずに溶けている。

 ずるずると神経が逆立つようなおぞましい感覚を引き起こしながら、御堂はカテーテル引き抜いていく。

 つぷん、とチューブが最後まで引き抜かれると、空虚な感覚を残したペニスの中心がずくん、と妖しい疼きを宿した。同時に、抗いがたい排泄欲求が込み上げてくる。

 ハッと御堂は我に返る。自分の身に何が起きようとしているのかをようやく自覚し、青ざめる。慌てた声を上げる。

 

「佐伯……っ、だめだ、よせっ! これ以上は……っ」

「漏らしながらイってしまえ」

 

 佐伯は背後で残忍に嗤い、勢いを付けて御堂を突き上げた。

 

「ひ、あああ―――――っ!」

 

 次の瞬間、決壊した。

 液体が迸る恥ずかしい水音が立ち、ペニスの先端から大量の聖水が爆ぜる。堰を切ってあふれ出す液体は止めることもできず、御堂の下腹をぐっしょりと濡らしてシーツに大きなシミを広げた。

 

「いい大人がお漏らしか」

「ぁ――っ、ぁ、あ……見る、な……っ」

 

 すべては佐伯のせいであるのに、心臓を抉るような羞恥と排泄の快感に呑み込まれながら、御堂は身体をビクビク痙攣させる。

 御堂の硬く勃ちあがったままのペニスに佐伯の手が伸びた。佐伯は手が濡れるのも構わずに御堂のペニスを上下に擦りあげる。性的な快楽を煽る動きにペニスはあっけなく佐伯に屈した。

 

「っ、んあ、は……っ、ぁ、あ……」

 

 ようやく聖水を出し切った尿道口がひくりと震え、続けざまにびゅくびゅくと精液を噴き出していく。その精液を幹に擦りつけるようにして佐伯は精液を最後まで吐き出させた。

 空気が漏れるような情けない声を上げながら、御堂は敗北にも似た絶頂を何度も味わわせられる。

 

「失禁しながらイくとはな」

 

 佐伯は御堂の耳元で囁きながら、腰を震わせて御堂の中にたっぷりと精液を注ぎ込んだ。

 聖なる気を含んだ精液に灼かれ、祓魔師の前で想像を絶するような恥辱に塗れながらも、御堂は被虐の陶酔に引きずり込まれる。

 汗まみれの身体を痙攣させながら、焦点の定まらない虚ろな視線を佐伯に向けた。レンズ越しに視線が絡み合う。

 

「さえ…き……」

 

 レンズ越しの凍てついた視線が御堂を射る。心身ともに削り取られて、御堂の意識はそこでぷっつりと途絶えた。

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