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Mirror

「目を逸らすな」
 背けた顔の顎を掴まれ、正面向きにされる。
 佐伯の息遣いが耳元で響く。
 御堂は、両足を開脚した状態で拘束され、手は後ろ手に拘束具で縛られていた。
 背後から佐伯が抱きかかえる状態で、御堂の局所をいじっている。後孔にはバイブを挿れられ、不快なモーター音とともに御堂を責め立てていた。
そして、目の前には、クローゼットに設置された大きな鏡が御堂の全身を余すとこなく映している。
「ほら、あんたの顔を見てみろよ。相当エロい顔をしているぞ」
 鏡の中の顔は、赤く上気し目は官能に潤んで自分を見つめている。そして御堂の局所は既に張りつめた状態で、先端から零れ落ちる粘液が佐伯の指に絡んで淫猥な音を立てていた。そして御堂の後孔には黒いバイブが顔をのぞかせ生き物のようにうねっていた。
 羞恥に見ていられなくて、御堂は思わず目を閉じた。
「ひっ!!」
 佐伯が御堂の急所を掴んだ。その激しい痛みに体がのけぞる。そのせいでバイブが大きく動き、体の中を大きく抉り、新たな快楽をもたらす。下半身が痙攣する。
「目を逸らすなって言ったでしょう、御堂さん」
 首元に顔を埋めた佐伯が耳元で囁きながら、鏡の中の御堂を視姦している。
「もうっ…やめ、て…くれ」
 屈辱に涙がこぼれる。佐伯が御堂の局部をいじる手を止めた。
「いい加減認めたらどうです?あなたは俺にやられてみっともなく喘ぐ存在だと」
「違う…違う…」
 涙を流しながら力なく頭を振る。だが、すぐに顎を掴まれて顔を上げさせられた。
「違わないさ」
 佐伯は再び御堂のペニスを擦り始める。そして、御堂の首筋に軽く歯を立てた。
「…うっ…あっ…やめ…。あぁ…」
 抑えようにも喘ぎ声が漏れる。もう限界だった。無理やり開かれた下肢がびくびくと震える。後孔に咥えさせられたバイブは断続的に強い快感を生み出してくる。
「そろそろイきそうか」
 佐伯の言葉にかすかに頷いた。佐伯が喉を鳴らして笑う。
「しっかり見るんだ。あんたのはしたない姿を」
 再度顔を正面向きにされ、鏡の中の自分を直視させられた。
「あぁっ!」
 悲鳴をあげて、佐伯の手の中でペニスが跳ね、精液を迸らした。身体の緊張がなくなり脱力し、佐伯の腕の中に深く沈み込んだ。鏡の中の自分は浅ましい顔と姿をさらしている。涙がこぼれた。
 佐伯がバイブのスイッチを止め、後孔から引き抜いた。びくっと体が震える。
「…何で…ここまでするんだ…。そんなに、私の事が…憎いのか」
 堪えきれずに嗚咽が漏れる。佐伯はそんな御堂をじっと見つめた。
「憎い?俺はあなたの事を憎いなんて思ったことはないですよ。御堂さん」
 何の感情も感じられない声で佐伯が答えた。
「なら…どうして?…どうして、私なんだ…?」
「あんたがいつまでたっても、俺に従わないからですよ」
 そうじゃない、と頭を振った。目から新しい涙が伝う。
「違う…なんで、私なんだ。…どうして、私なんだ?」
「あんたはいつもそればかりだな」
 苛立ちのこもった声色に変わった。ちっ、と舌打ちが聞こえる。
 佐伯の手が、後ろ手に戒めていた拘束具に触れる。何かされるのかと、体が強張った。しかし、佐伯はそのまま、手首の拘束具を外した。肩が楽になる。御堂は拘束が解けた手を恐る恐る身体の前にまわした。
「っ!!」
 その時、突然佐伯に背中を押され、前に突き倒された。咄嗟に両手で顔をかばった。手が床に打ち付けられ、鈍い痛みがはしる。手をついて起き上がろうとして気が付いた。脚が開脚されたまま拘束されているため、佐伯に尻を向けた四つん這いの体勢になっていた。
「あ…っ」
 手の拘束を外した佐伯の意図が分かり、体が恐怖に震えた。
「せっかくだから、犯されて喘ぐ自分の顔を見てみろよ」
 立ち上がった佐伯が御堂の前髪掴んで鏡を向かせた。鏡の中の涙にぬれた顔の自分と目が合う。
「…くっ…」
 苦しさに呻き声がもれる。髪を掴んでいた手が離れた。そのまま腰を掴まれ引き寄せられる。佐伯が自分の前をくつろげる気配がする。
「いい具合に開いているじゃないか」
「やめろっ!」
 逃れようと腰を引くが意に介されず押さえつけられる。
「お願いされているようには聞こえないな。…その格好で懇願してみたらどうです?」
 屈辱に顔が赤くなる。
「誰が…!お前なんかに!」
 喉の奥で嗤う声が聞こえ、硬い屹立が後ろの窄まりに添えられた。歯を食いしばり目を閉じる。熱く猛ったものが一気に根元まで入ってきた。
「ぅっ…くっ…」
 何とか声を押し殺す。先ほどまで淫具で炙られていた身体は、あっさりと佐伯のモノを飲み込み、尚且つ体の奥底からうずくような感覚を伝えてくる。
「っ…ふ……ぅあっ」
 バイブと違い、佐伯は的確に御堂の快楽を生じるポイントを突いてくる。既に一回達したばかりだ。過剰な快楽が逆に苦痛となっていた。
 体に力が入らず、肩をついて喘ぐ。拳を握りしめ、なんとかこの快楽を耐え抜こうと歯を食いしばる。突然、佐伯にペニスを握られた。
「うぁっ…」
「さっきイったばかりなのに、既に固くなっているぞ」
 佐伯が低い声で楽しげに笑う。自分の身体の反応を認めたくなくて、御堂は顔を伏せた。
「見ろよ。自分の顔を」
 佐伯が御堂の前髪を掴んで、顔を上にあげさせた。力が入らない御堂はあっさりと上を向く。鏡の中の熱く官能に濁った眼が自分自身を見つめている。恥辱に震えた。
「ほら、言えよ。あんたを支配しているのは誰だ?」
 佐伯が上半身を倒し、御堂の耳元に口を寄せ愉しげに囁く。
「冗談じゃない…」
 激しい怒りと憎しみを込めて鏡の中の佐伯を睨みつけ、力を振り絞って声を出す。しかし、弱々しい声にしかならなかった。
 鏡の中の佐伯が御堂を見ながら、喜悦の笑みを浮かべる。
「聞こえないなあ」
「あぁっ!」
 深く突き上げられ、同時にペニスを強く擦り上げられる。我慢しきれず声を上げた。
「楽になりたいんだろう?俺の元に堕ちてこい」
「いや、だ…!絶対に…!」
 必死に声を張り上げる。無理やり与えられる快楽に全身から力が抜けていく。佐伯に激しく突き上げられがくがくと身体が揺れる。
「お前はもう、俺の所に堕ちてくるしかないんだよ」
「ぅっ……ああっー!」
 御堂の身体が一瞬硬直し、大きく震えた。ペニスから白濁した液体が迸る。先ほどより少ない液体は佐伯の手にかかり、ポタポタと床を汚した。
 がくり、と御堂の上半身が床に崩れ落ちる。佐伯は御堂の腰を支え、意識のなくなった御堂をさらに犯した。数回大きく腰をグラインドさせ、御堂の中に熱い液体を放つ。
 御堂の中から自分自身を引き抜き、支えていた腰を離すと、緊張を失っている御堂の身体はそのまま床に力なく崩れた。
「……チッ」
 佐伯は舌打ちし、自分の前で意識をなくし伏せる御堂を眺めた。結合部から佐伯の精液が御堂の太ももを伝って流れ落ちる。
(身体は既に俺の支配下にあるのに、こんなに強情だとは)
 当初は御堂を凌辱するたびに気分が高揚したのに、最近はなぜか苛立ちの方が勝り胸の渇きがよりひどくなる。
 御堂が自分に屈すれば、この不快感はおさまるはずだ。
(やり方を間違えたか?……いや、もうすぐだ。こいつのすがりついているプライドを徹底的に崩せば、もうすぐ、俺の元に堕ちてくる)
 昏い笑いを浮かべ佐伯は御堂を見下ろした。

 

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