
街灯に照らされた街路樹はみずみずしい新芽を付けて、公園に植えられた桜の木は淡い紅を乗せた花を無数に咲かせている。
寒々としたモノトーンの世界が少しずつ色を取り戻していく季節だ。心なしか街ゆく人々も浮き足立っているように思える。誰もが春が来ることを心待ちにしているのだ。
しかし、早足でアスファルトを踏みしめる克哉の心は周囲に同調することはなく、視界に入り込む桜の花に意識を向けることもなかった。
その日も克哉はMGN社を定時に出ると、御堂のマンションへとまっすぐに向かった。
慣れた仕草でカードキーを使って、エントランスをくぐり、御堂の部屋のドアを開ける。
「ただいま戻りました」
そう声をかけて、克哉は玄関先でジャケットを脱ぎつつ、光が漏れるリビングへと足を向けた。
まず始めにこの部屋に帰って行うことは、御堂の姿を探すことだ。リビング、寝室、書斎と御堂がいそうな場所を順繰りに確認していく。御堂の行動パターンは読めず、生活リズムも破綻している。家から出ることは一切ないのでその点についてだけは安心していたが、風呂の湯を出しっぱなしにしながら湯船の中で寝入っていたこともあるので油断できない。
だが、今日はすぐに御堂の姿を見つけた。リビングのソファに腰をかけてぼんやりとしている。伏せがちの瞼の隙間から御堂の黒々とした眸が覗いているが、焦点はどこにもあっていなかった。
「御堂……?」
克哉の声にも反応しない。御堂の名前を呼びながら近づくが、御堂はまったく動く気配はなかった。表情がそげ落ちた顔は、よく出来た蝋人形のようにひんやりとして生気を感じさせない。
ぞわぞわとした寒気が克哉の背筋を這い上がった。これはまるで、かつての抜け殻状態だった御堂のようだ。だが、克哉は怖気を振り払い、御堂の前にゆっくりと跪いた。
「御堂孝典、待たせてすまなかった」
フルネームで名前を呼びかけながら、克哉は御堂のズボンのベルトを外し、アンダーをずり下げて柔らかい性器を取り出した。御堂は変わらず、ぴくりとも反応しない。
克哉は御堂のペニスを手で持ちながら、股座に頭を伏せた。性器を根元まで口に含み、唾液をたっぷりと塗して舐めしゃぶる。
口の中で頼りなく揺さぶられる性器を必死にしゃぶっていると、次第にそれは硬さと大きさを増していった。その反応に胸を撫で下ろす。人形状態の御堂は、何をどうしても性器が反応することはなかった。すなわち、御堂の心はまだここにある。
兆したペニスを大きく育てようと、一心不乱に御堂のペニスに奉仕した。陰嚢を柔らかく揉みながら、頬をすぼめてじゅぷじゅぷと淫らな音を立てつつ頭を前後させる。克哉の口の中で硬さと大きさを増した屹立から蜜が溢れ、口の中にいやらしい味が広がった。
その時だった。頭上で御堂の気配が動いた。頭に御堂の手が置かれる。そのままぐっと強く押された。
「――んっ」
喉奥に張り詰めたペニスをねじ込まれる。舌の付け根を圧迫されて嘔吐きそうになるが、それをぐっと堪えて御堂のペニスを深くくわえ込んだ。
「私のものがそんなに美味いか」
頭上から嘲る声が降ってきた。上目遣いに御堂を見上げれば、黒々とした眸と視線が重なった。克哉を冷たく睥睨する御堂、その意識がこの場に戻ったことに胸を撫で下ろす。だが、始めてしまった行為はここで中断できない。御堂が満足するまで口淫を続けなくてはならない。
苦しさを堪え、喉を拓いて、御堂のペニスを根元まで咥えて舐めしゃぶっていると、御堂の足先が克哉の股間を踏みつけた。布越しに股間を揉み込まれると、御堂の足裏を押し返すように克哉のペニスが張り詰めていく。克哉の浅ましい反応を吐息で笑う御堂が、克哉のペニスの先端に埋め込まれた固い金属を爪先でいじくる。
「っ、んん――っ」
克哉のペニスのいただきには金属のリングが埋め込まれている。御堂に針を貫かれ、ピアスを付けられたのだ。ペニスだけではない。両の乳首にも同じようにリングピアスが飾られていて、それらのピアスが何かの弾みで動く度に、ぞっとするような甘い痺れが克哉を襲う。
御堂はペニスのピアスを揺さぶるようにして、敏感な鈴口の粘膜を無遠慮にいたぶった。そんな屈辱的な行為にさえ感じてしまい、踏みつけてくる足裏に自ら股間を押し付けるよう足を開いた。
「口が止まっているぞ」
「……くぁっ」
御堂が克哉の頭を両手で掴んで乱暴に揺さぶった。
限界まで張り詰めたペニスに口内をみっちりと犯される。呼吸を塞がれる苦しさを堪えながら、御堂のペニスに奉仕した。
だが、絶頂までもう少しのところで、御堂に髪の毛ごと頭を引かれた。そのまま口からペニスを引きずり出される。
「下の穴に挿れてやる。準備しろ」
ぜえぜえと酸素を取り込みながら、よろよろと立ち上がった。唾液で濡れた唇を手の甲で拭うと、スラックスのポケットから潤滑剤のチューブを取り出した。手にジェルを取り、手の平で温めながら御堂のペニスにたっぷりと塗した。そして、自分のベルトを外し、アンダーごとスラックスをずり下げる。
自らの用意をしようとしたところで、御堂が凍えた声で命じた。
「そのまま私に跨がれ」
「まだ……」
準備が出来ていない。
そう言おうとしたところで、御堂の有無を言わせぬ視線に見据えられて、克哉は言いかけた言葉を呑み込んだ。御堂の双眸は烱々とした嗜虐の光を宿している。人形のように反応に乏しかった御堂が、今や克哉をいたぶることで鮮やかな生気を取り戻している。
克哉は大きく息を吐いて覚悟を決めた。
To Be Continued……